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嬉しくて、愛おしくて、心臓が掴まれたみたいにキュンとした。
自分の顔が赤いのも忘れて、嬉しさから自然に笑みが溢れる。
そのまま空いている手を、お腹に回るハラちゃんの手に重ねた。
『んふふ、嬉しいな。
ハラちゃんにとって、私は嫉妬してもらえるほどの存在なんだ♪』
ハ「当たり前だろう？
僕にはもう、心から信じられるのはAしかいない」
『大丈夫、だいじょーぶ。
もしハラちゃんに大切な人が増えても、私は拒否されない限り 一緒にいるからね』
ハ「ん…。
…貸して。僕がやる」
『じゃあ、お願いします』
背中からハラちゃんが離れ、髪を優しく梳かれる。
数分もかからないうちに、いつも通りの私が鏡の中に存在していた。
『ありがとう、ハラちゃん。
さ、朝ごはん食べに行こう？
その後は散歩でも行こっか。今日は一日、ハラちゃんと一緒にいたいな』
ハ「僕もそうしたいと思っていた。
…ありがとう、A」
仲良く手を繋いで、ホテルのレストランまで向かう。
完璧で、冷静沈着。
他人にドライなハラちゃんが、隙を見せてくれるのは私だけ。
それが凄く嬉しい。
願わくば、これからもそうだともっと嬉しいけど。
…自分にできない事を強制するのは、お門違いだってわかってるから。
"今"は私がハラちゃんの一番だという事実を噛み締めて。
今日も精一杯、愛を返すのだ。
＊
ハラちゃんと朝ごはんを食べて、レストランを後にする。
上階から降りてきたエレベーターからヴィヴィアくんが降りて来たので、「おはよう」と挨拶を交わした。
何冊かの本を抱えたヴィヴィアくんを見て、少し不安になったので聞いてみる。
『…ヴィヴィアくん、これからその本達を読むの？ …朝ごはん食べてからにしなよ？』
ヴィ「Aちゃんには、お見通しだね」
緩く微笑んだヴィヴィアくんが、私に手を伸ばす。
あと少しで触れる。───そう思った時、後ろから手を引かれた。
ハ「…そろそろ行くぞ、A」
『あっ！？ う、うん。
じゃあまたね、ヴィヴィアくん。
ご飯はちゃんと食べてねー！』
振り返って手を振り、別れを告げる。
ヴィヴィアくんは私達が居なくなるまで、何を考えているかわからない顔でこちらを見ていた。
ヴィ「……牽制、か」
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作者名：鈴奈 | 作成日時：2023年7月12日 1時
