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伊地知「では、
私はこちらでお待ちしていますのでお気をつけて。」
『ありがとう。』
車の外を出ると、風が強く耳が疼くように痛い。
『悟、これ使いな。』
マフラーをふわっと巻いてくれた。
Aの匂いがして温かい。お前はこんな日でも。
仏花を買って水を入れたバケツを持って
しばらく上へ歩く。
足を踏むたびに雪が固まってギュッと音が鳴る。
2月〇日。
今日はAの両親の命日だ。
毎年一緒に向かう。
一人で大丈夫だと言われても必ず一緒に向かう。
大丈夫なわけがないからだ。
Aが墓石を拭いている間に俺は花を挿す。
何の躊躇いもなく氷のような冷たさの水に
ガッと手を突っ込み布を絞り、ひたすら拭く。
指が真っ赤になっても止まることは無い。
バケツの水がバシャバシャと大きな音を立てる。
とっくに綺麗になっても
自分の罪を見つめるように何度も何度も、何度も。
ずっと。
五条「A、もういいだろ。やめろ。」
思わずAの腕を引く。
『…ああ、うん。』
毎年、やめろと言うまでずっとだ。
線香をあげお供えを置く。冷え切った手を合わせる。
僕は正直、合わせたくない。
でもAが合わせるから合わせる。
その間は何も考えていない。考えないようにしている。
毎年。
真っ赤な手を震わせ目を瞑るAの姿を
斜め後ろからずっと長い間ただ見つめるだけだ。
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海月(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!クソ好きと供給が素直すぎて笑いましたw元気出ました😂 (1月22日 20時) (レス) id: 5fb6f2a200 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - クソ好きです🍌色気男主大好物なので助かります!!供給ありがとうございます!!!✨ (1月22日 0時) (レス) @page23 id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - 白夜琉さん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです😭✨励みになります😭 (1月3日 8時) (レス) id: 8800e7a7fe (このIDを非表示/違反報告)
白夜琉(プロフ) - この作品、好きすぎて辛いです、、、、切実に海月様に感謝を伝えたい……ありがとうございます。 (1月2日 21時) (レス) @page3 id: ca611a4723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海月 | 作成日時:2024年1月2日 13時