第136話「吸血鬼の過去」 ページ10
探偵社に行くと,既に会議室に社員が勢揃いしていた。
「……朝から何でこんな大勢居るんですか?」
「太宰から聞いた。だから予定よりも早く出社した」
「遅れて聞き損ねるなんて嫌だからねェ」
「与謝野先生。その時はちゃんと待ちますよ」
精々社長や乱歩は居るだろうと思っていたが,蓮華は皆の言葉に目を丸くする。
しかし改まって沢山の人に自分の事を話すとなると緊張する。
「…お集まり頂きありがとうございます。
今から話す事は,吸血鬼である私にも理解が及ばない出来事です。それを踏まえてお聞き下さい」
探偵社の皆が頷くのを確認すると,蓮華は少しずつ思い出す。
自分が此処に来た日の事を。
自分が経験した数々の出来事を。
「私の母は良家の生まれでした。母は親が決めた婚約者がいましたが,それを拒否して半ば無理矢理に父と結婚しました」
勿論猛反対されたが,根気強く説得し,両親の友人の協力もあり渋々承諾したらしい。
そして父の故郷である関西で子供が生まれた。
「ですが,私は二人の事をあまり覚えていません」
二人は沢山の愛情を注いでくれた。
しかし,幸せは長く続かなかった。
「私が五歳の頃に火事で亡くなったからです」
燃え盛る炎,駆け付ける消防車。
火が消し止められても、周りの大人に押さえ込まれても只々手を伸ばして泣き叫んだ。
お陰で今でも大きな火は苦手だ。
涙が枯れた頃,父には家族が居なかったので母の実家に預けられた。
『何だその髪と目の色は』
『こんな気味の悪い子,引き取れない』
『お前が代わりに焼かれて死ねば良かったのに』
母は家族に愛されていた。しかし娘は愛されなかった。
親戚が次々に彼女を嫌がり軽蔑している中,足音と共に凛とした声が響いた。
『罪の無い幼子に寄ってたかって何をしている』
其処に現れたのは黒髪が美しい女性だった。
しかしその声は低くて,男と間違えてしまうほどに中性的な雰囲気を醸し出している。
『何だ貴様!使用人のお前には関係無いだろう!』
『関係ない?巫山戯るな。その幼子は僕の主人の娘だ。即ち,僕が守るべき娘だ』
そう言い残すと,女性は少女を連れて去って行った。
思わぬ出来事に混乱していると,彼女は少しだけ口角を上げた。
「僕は
此れが彼女にとって初めての救いであり,
____運命が廻る瞬間だったのかもしれない。
第137話「香紅夜という女性とは」→←第135話「二人だけの御茶会」
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます!気に入って下さって何よりです!ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします! (2020年3月26日 0時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか?いつも楽しく読んでます!更新できる時にして無理しないでください。待ってます! (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2020年1月11日 0時