第133話「友達だから」 ページ7
「敦の孤児院の院長が死んだ？」
「うん……敦君，酷く混乱してて」
乱歩の代理で向かった事件の被害者が孤児院の院長だった。
彼は密造銃を持っており，太宰にマフィアの伝手を当たって貰ったそうだ。
「これは…」
蓮華は情報提供者の芥川から渡された資料を見て言葉を失った。
院長の過去，敦に施した苛烈極める暴力の意味。
蓮華も真実を推測するのは容易かった。
『敦が青ざめるのも当然や……』
憎んでいた相手の存在が丸ごとひっくり返れば，誰だって混乱するだろう。
彼が敦にした事は決して許されない。
しかし全ては敦を生かす為にした事だ。
「彼は今，真実と向き合おうとしている」
「…乱歩さん」
「君は如何かな？」
蓮華は答えられなかった。
吸血鬼である事はもう話した。しかしそれに至る経緯や，自分の過去は何も話していない。
判っている。それは逃げている事と変わりない。
「……判らないなら，今君が出来る事をすれば良い」
「え？」
「敦君が心配じゃないの？」
乱歩の言葉に目を伏せた。
ふと思い出したのは彼の青ざめた表情。
「でも…彼は一人になりたいと云っていました。
私に出来る事は何もありません」
「………嗚呼もう面倒くさいなぁ」
乱歩はやれやれと溜息を吐くと，此方に向かって指を突きつけた。
「傷付いた人々にお節介を焼くのが君の長所だ！ほら行った行った！」
そう言われ探偵社を放り出される。
まるで嵐が過ぎ去ったような感覚に呆然とする。
「……行くしかないよなぁ」
蓮華は探偵社のビルを出て歩き出した。
正直心配だったのは事実だ。
一人にして欲しいと云われても気になるものは仕方ないのだ。
お節介とか偽善者とか云われても友達が心配なのだ。
「あ」
「やぁ蓮華ちゃん。来ると思ったよ」
親子連れが多い公園に太宰が居た。
彼は全てを察したような表情で向こう側のベンチに視線を送る。
「敦君が心配で来たのだろう？」
「……はい。何か話しましたか？」
「少しね」
遠くから敦を見遣る。彼は顔を覆って泣いていた。
その姿に胸が苦しくなる。
「敦君が羨ましいな」
「え？」
「こんなに蓮華ちゃんに思って貰えて」
そう云って太宰は蓮華の頭に手を乗せた。
それが何となく気恥ずかしくて，思わず目を逸らす。
「……友達を心配するのは当然やろ」
「…そうだね」
『暗くなる前には帰っておいで』と云うと，太宰は夕焼け色の道を歩いて行った。
第134話「夕焼けの空に迷い犬」」→←第132話「父の肖像」
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます！気に入って下さって何よりです！ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします！ (2020年3月26日 0時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか？いつも楽しく読んでます！更新できる時にして無理しないでください。待ってます！ (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2020年1月11日 0時
