第154話「吸血鬼,叱られる」 ページ29
ベンチに座る二人には気まずい空気が流れていた。
太宰は夕焼け色の海を眺めたまま,何も話さない。
『この沈黙が辛い…』
何故こんな事になっているのかは判っている。
Qを穏便にマフィアに帰すためには自分が吸血鬼であると伝えるのが手っ取り早いと思った。
その為には実践してやる方が信憑性も高い。
しかしQに危害を与えると詛いにかかってしまう。
蓮華は勇気を出して口を開いた。
「太宰さん,危険な事をしたと理解しています。ですがこれしか方法が……」
「吸血鬼だとバラしてあわよくば嫌われて貰うことが?」
「それは違…」
「違わないでしょ」
太宰は蓮華の言葉を遮った。
険しい顔なのに憂いの篭った瞳が蓮華を射抜く。
「Qを刺激せずにマフィアに連れ戻すよう誘導したのはまだ良い。でも君だけが犠牲になろうとするのは納得出来ない」
太宰は薄々思っていた。
人になりたいと云いながら,彼女は吸血鬼である事を理由に無茶をする傾向にある。下手すれば命さえも天秤に掛けてしまうような危うさがある。
「それに癪だけどQだって君の事を受け止めていたじゃないか。探偵社の皆だって,ムカつくけど中也も」
「癪って…」
「君は人として生きたいのだろう」
徐ろに自分の手が包まれる。暖かい。
切実そうな声色と表情に蓮華は目を奪われる。
「…うん」
「なら,自分の命を軽く見ないでおくれ」
握った手を引っ張られて,そのまま太宰の腕の中に包まれる。
「…今回は偶々運が良かっただけだ。異能無効化の私が居たから。唯,それだけなのだよ」
蓮華は諦めたように全身の力を抜いた。
太宰の云った事はほぼ図星だ。天使だと思っていた少女が化け物だったら,流石に離れていくだろうと思っていた。
「すみません太宰さん」
結局思惑通りにはならなかったけれど。
「私の事…心配してくれてありがとうございます」
今,不謹慎かもしれないが,彼に心配してくれた事を喜んでいる自分が居た。
「何で笑ってるのさ…本当に反省してるの?」
「し,してますよごめんなさい」
不機嫌そうな太宰に首を傾げた。
蓮華は気付かなかったが彼の視線は黒と白の髪飾りに向けられていた。
『妬けるなぁ…』
***
8,000hit超えましたやったあああ!!
(体調は良くなったけど課題が多くて困る…)
すいません言い訳ですね…これからも宜しくお願いします!
☆星木雪野☆
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます!気に入って下さって何よりです!ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします! (2020年3月26日 0時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか?いつも楽しく読んでます!更新できる時にして無理しないでください。待ってます! (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2020年1月11日 0時