第146話「真っ直ぐな想い」 ページ20
「妹ぉ！？」
“黒髪の撫子”の正体は黒蜥蜴の銀だった。
それでも衝撃の事実であるが，しかも彼女は芥川の妹らしい。
芥川と云えば出会い頭に攻撃されたりやり返しに血を吸ってやったりと一悶着あった相手だ。
「確かに彼と似ていますね。兄妹揃って綺麗な顔立ちをしています」
「あの…」
蓮華はまじまじと銀を観察する。
近くで見れば確かに芥川と血の匂いが似ている気がする。血縁者同士は血の匂いが似ている傾向にあるから。
因みに彼の血は美味しかったけど味が薄かった。
「蓮華。敵とは云え人様の顔をジロジロ見るのは止めろ」
「それもそうですね……失礼しました」
「い，いえ」
国木田の言葉に蓮華は大人しく引き下がる。
しかしあんな冷酷そうな男にも家族が居るとは，彼もマフィアの異能者である事を除けば普通の人間という事だ。
樋口は撫子の正体が銀と判ってホッとしたのか，涙を流していた。
「大丈夫ですか？」
「泣いてません！」
「まぁ…良かったじゃないですか」
「全く……如何する花袋？お前マフィアの類は嫌いだろう」
国木田に云われて花袋は口を引き結ぶ。
しかし彼の決心は揺るがなかった。
「貴女が黒社会の人間だったとしても，儂は貴女に尽くそう。
貴女を一目見た瞬間，儂は美しさの意味を知った」
花袋は震える手で恋文を持って銀の前に跪く。
相手がどんな人間でも真っ直ぐな，強い想いだ。
「………」
銀はゆっくりと口を開いた。
＊＊＊
「……泣いてましたね，彼の方」
「花袋さん，大丈夫でしょうか？」
結果は見事に玉砕した。
外で待機していた蓮華にも聞こえるほど花袋は号泣していた。
「直ぐ調査に掛かるだろう。その為の恋文だからな」
「え？」
国木田は云った。
元々彼に惚れた相手に想いを告げる度胸は無い。
しかし何時までも片思いをしていれば調査が出来ないと彼も理解していた。
「だから奴は進んで玉砕したのだ」
「成る程」
花袋が女性が苦手なのに恋文を渡そうとしたのか理解出来た。
『恋，かぁ』
その感情には覚えがある。
相手は紛れもない自分を殺そうとした婚約者。
「どうかした？」
「何も」
自分に言い寄ってくる男や嫉妬に狂った女。
その所為で色恋に良い思い出が無い。
彼の愛は偽りだったが，まさに希望の光だった。
『私，きっとあの男に惚れてたんやね』
蓮華は人知れずに皮肉に笑った。
恋は盲目と云うけれど，案外事実かもしれない。
第147話「覆い隠された悪夢」→←第145話「田山花袋と黒髪の撫子」
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます！気に入って下さって何よりです！ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします！ (2020年3月26日 0時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか？いつも楽しく読んでます！更新できる時にして無理しないでください。待ってます！ (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2020年1月11日 0時
