第137話「香紅夜という女性とは」 ページ11
その女性＿＿＿香紅夜は不思議な人だった。
長い黒髪に金色の瞳。見た目にそぐわない中性的な声と古風な口調。何処か儚げな雰囲気。
しかし蓮華にとって，彼女は正に自分を救済する天使のような存在だった。
『貴様…拾ってやった恩を仇で返す心算か！』
『恩だと？僕は側から貴様らに仕えた覚えは無い。
抑もお前達はこの娘を嫌がっていただろうが』
その凛とした姿に，蓮華は見惚れた。
『誰が何と云おうと，この娘は僕が引き取る』
彼女は元々あの家に奉公していた使用人で，母とは幼い頃から共に過ごしていたそうだ。
そして父とは，学生時代からの親友だったという。
こうして蓮華は関西で香紅夜と二人で暮らすことになった。
『お嬢…その怪我はどうした』
『男子に髪の色を莫迦にされたからやり返した！そしたら喧嘩になった！』
『全くお前は…』
昔から身体能力が高かった。
学校に上がると，風変わりな容姿から周りに遠巻きに見られるようになった。
冷やかされる事もあったが，蓮華は同年代の男子と取っ組み合いの喧嘩をする程ヤンチャだった。
『香紅夜…私の髪と目ってそんなに変？』
『確かに周りから見たら，あまり見ない色だろうな。
だが僕は綺麗だと思う。強い命の色だ』
生傷の絶えなかった少女を手当てしながら頭を撫でる。
陰湿な女子も揶揄う男子も彼女の敵では無かったが，それは香紅夜が味方で居てくれたからだ。
彼女の存在が蓮華を強くした。
「…それは唐突でした。私が十歳の頃です」
蓮華は吸血鬼の力を自覚した。
満月の夜，香紅夜の首筋に噛み付いて血を啜った。
『………え』
『……お嬢』
『ごめんなさい……ッ！私，そんな心算じゃ』
『判ってる。……判ってるさ』
何が何だか判らなくて怖かった。
しかし香紅夜は何も云わずに受け入れてくれた。
蓮華は“吸血鬼”と云う生き物を調べて，生きる術を模索した。それは謂わば自分の身体で人体実験をするようなものだったが，彼女が居れば何も怖くなかった。
『どんな娘でもお前はお前だ。今更軽蔑などするものか』
彼女だけは絶対的な味方だった。
苦手な勉強も揶揄ってくる奴等も怖くない。
たとえ，人で無くなっても。
『泣くな，お嬢』
しかし、運命は残酷で。
『愛しいお嬢……強く，生きてくれ』
それが香紅夜の最期の言葉だった。
＊＊＊
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☆星木雪野☆
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます！気に入って下さって何よりです！ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします！ (2020年3月26日 0時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか？いつも楽しく読んでます！更新できる時にして無理しないでください。待ってます！ (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2020年1月11日 0時
