第126話「魔の手の救済」 ページ43
___キーボードを叩く音が響く薄暗い部屋にて。
「白鯨の墜落には失敗しましたか。ですがほぼ計画通りです」
パソコンを操作する指には血が滲んでいた。
彼こそ,システムをハッキングして白鯨をヨコハマに落とそうとした張本人である。
「またヨコハマを傷つけ敵を弱体化させ,有能な異能者の勧誘にも成功しましたから」
その男の後ろには別の男が居た。
牧師風の黒い衣装に身を包み,眼鏡を掛けた男だ。
「私は勧誘されたつもりはない」
彼は組合の構成員,ナサニエル・ホーソーン。
芥川に傷付けられた故に意識不明のミッチェルを治す条件で,一時的に手を貸したのだ。
「共にこの地を罪深き者の血で染めましょう」
ホーソーンが出て行った後,男が見ているパソコンの画面にある少女が映った。艶やかな赤い髪に白いベレー帽を乗せた少女だ。
「花柳蓮華……」
その画像の少女は八重歯を見せてとても楽しそうに笑っていた。
世界の醜さを何も知らない天真爛漫な子供のように。
「………謎に包まれた美しい戦姫」
彼女は吸血鬼だ。
仲間を助ける為にマフィアに自分の正体を明かした所為で裏社会でその名は確実に広まっている。
しかしその情報には空白が多い。
「……何と哀れな事でしょう」
圧倒的な戦闘能力と人の心情を悟る彼女は今,光と闇の狭間に立っている。仲間思いでお人好しな姿は光で十分に生きていけるだろう。
「貴女にそれは相応しくありません。
白でも黒でもなく……真っ赤な紅が貴女には相応しい」
彼女はまだ知らない。
自分の事も吸血鬼の事も,全て忘れてしまっている。
何も知らぬまま光を目指すべく抗う姿は正に籠の中の鳥の様だった。
「僕が思い出させてあげましょう」
男はガリっと爪を噛んだ。その拍子に指に血が滲む。
「そうすれば,貴女は帰るべき場所が判る筈です」
白にも黒にもなれなかった彼女を紅く染める。
それこそがあの吸血姫にとっての救済となる。
「もうすぐ感動の再会です…とっておきの舞台をご用意しますよ」
モニターに新たな画像が映った。
それを見て男は紫色の瞳を細めて笑う。
「死神」
其処には白い襟巻きを身に付けた青年が映っていた。
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» あけましておめでとうございます!随分と遅くなってしまいましたが、喜んで貰えて光栄です!私も乱歩さん大好きなので、また蓮華と絡ませようかなと考えております!汚濁の中也さんも本当良いですよね!!これからもよろしくお願いします!! (2020年1月2日 13時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - ありがとございます!!本当に乱歩さんかっけぇ…汚濁の時の中也かっけぇ…そしてあけましておめでとうございます!! (2020年1月2日 12時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - みんみさん» ありがとうございます!気に入ってくれたようでとても嬉しいです!まだまだ未熟者ですが・これからもよろしくお願いします! (2019年10月23日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - もうどハマりしてます!!ゆっくりで大丈夫ですので続きを楽しみにしてますね! (2019年10月23日 2時) (レス) id: c8f4f596b6 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!これからも頑張って続けて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時