第87話「吸血鬼ともう一人の紅い華」 ページ3
突然敦を斬り付けた鏡花の異能_____夜叉白雪。
夜叉の動きの速さに身体が追いつかなかった。
崩れ落ちる彼と間近に感じた血の匂いに唖然としていると,何処からか声が聞こえた。
「害獣の血でも飛沫く様は美しいのう」
其処に居たのは着物を纏った女性だった。
燃える様な紅蓮の髪を簪で纏めた美しい女性だったが,その声で夜叉に命令したのは彼女だと判った。
「そうは思わぬかえ。愛しの鏡花や」
恐らくマフィアの人間だろう。
表情は優しげだが,犯罪者特有の血の匂いと危険な気配を感じた。
「息災じゃったが?私がどれほど其方を案じ胸を痛めたか。
……このような獣畜生共の下に其方を残す事になって」
そう云って敦の背中をヒールで踏み付ける。
敦が痛みに呻いた。
「じゃが私が扶けに来た。もう心配は要らぬぞ」
彼女が携帯を閉じると,夜叉白雪は霧の如く消えた。
蓮華は鏡花を守るように立ちはだかる。
「…随分と手荒なご挨拶ですね。貴女はポートマフィアの方でしょう」
「如何にも。私の名は尾崎紅葉。ポートマフィアで幹部の地位についておる」
「挨拶もなしに仲間に手を出してくれるとは……これ以上手出ししたらそれ相応の対処をさせて頂きますが」
蓮華は真紅の瞳で紅葉を睨みつけると,彼女はフッと笑った。
「………そうか,お主が花柳蓮華か」
「だったら何だと云うのですか」
「いや,以前中也からお主の話を聞いてのう。一度で良いからゆっくり話がしたかったのじゃが……」
お主は既に脱走した後でのう,と彼女は口元を袖で隠した。
「何故,貴女が…電話を」
「………業者にでも吐かせましたか」
「そうじゃ。この程度マフィアには容易い」
ヒールが敦の傷に食い込む。彼の骨が軋む音が聞こえた。
「もう何も思い煩う事は無い。私が守ってやろうぞ」
その言葉に敦は叫んだ。彼女はもうマフィアには戻らない,と。
「彼女の力は探偵社の仕事で振るわれるものだ!」
その時,紅葉の頬から涙が流れた。
「矢張り,鴎外殿の許可など待たず迎えに来るべきであった。
このような欺瞞と偽善の巣にそなたを一秒でも置いてはおけぬ」
紅葉は鏡花を優しく抱きしめる。
まるで母親が娘を想うような慈愛の感情が見え隠れする。
「可哀想にのう……お主も,甘言に唆され自分の本質を見失って居たのであろう?」
紅葉は優しく微笑み,真紅の瞳を捕らえる。
「のう__________“吸血鬼”の娘よ」
第88話「吸血鬼の性とは残酷で」→←第86話「夜叉が与える罰」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» あけましておめでとうございます!随分と遅くなってしまいましたが、喜んで貰えて光栄です!私も乱歩さん大好きなので、また蓮華と絡ませようかなと考えております!汚濁の中也さんも本当良いですよね!!これからもよろしくお願いします!! (2020年1月2日 13時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - ありがとございます!!本当に乱歩さんかっけぇ…汚濁の時の中也かっけぇ…そしてあけましておめでとうございます!! (2020年1月2日 12時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - みんみさん» ありがとうございます!気に入ってくれたようでとても嬉しいです!まだまだ未熟者ですが・これからもよろしくお願いします! (2019年10月23日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - もうどハマりしてます!!ゆっくりで大丈夫ですので続きを楽しみにしてますね! (2019年10月23日 2時) (レス) id: c8f4f596b6 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!これからも頑張って続けて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時