第103話「少年よ崩壊する街を走り抜け」 ページ19
「遂に始まってしまったか…」
建物の屋上から目を凝らすと破壊されていく街がよく見える。
人々はQの詛いに侵され,次々と街に煙が上がる。
おそらく組合の仕業だろうが,このままだと街が崩壊するのは時間の問題だ。
「さて,どうするか………ん?」
空に浮かぶのは白い鯨。
地上の者は殆ど気付いていないだろう。
しかし確かに見えた。その白い鯨から一人の少年が人形を持って落ちて行く場面を。
「………!」
白い襟巻きを靡かせて軽やかに飛び降りた。
少年が何者かに狙撃されたからだ。
このままでは彼は地面に叩きつけられて死んでしまう。
「………あれは」
目を疑った。
少年は狙撃の衝撃波で気絶している筈。
しかし彼の肉体はバキバキと音を立てて変化していた。
土煙を上げて降り立ったのは白い獣だった。
「白虎………!」
***
パラシュートを撃ち抜かれ,落下して死ぬと思っていた。
しかし,目を覚ました敦は自分が生きている事に驚きを隠せなかった。
『………生きてる………?』
しかしすぐに自分の役目を思い出して立ち上がる。
早くQの人形を太宰に届けて異能を止めないと。
「探し物はこれか?」
そう云って差し出されたのはQの人形だった。
敦は直ぐにそれを受け取って礼を云う。
「そ,そうです!ありがとうございます!」
「礼など要らないよ」
見上げると,其処には整った顔立ちの青年がいた。
黒髪だが右側の髪に赤いメッシュが入っており、真紅の瞳は何処か神秘的な雰囲気を醸し出ている。
「!?」
その時激しい銃声と共に近くの地面が抉れた。
空中から組合の連中が自分を狙っているのだ。
「あ………早く逃げて下さい!このままじゃ貴方も巻き添えを」
「心配は無用だ。俺はこんな鉛玉では死にはしない」
青年はそう云うだけで動こうとしない。
そして狼狽る敦に優しく微笑む。
「走れ、少年」
その言葉は,まるで言霊のようだった
青年の姿は土煙で隠れて見えなくなる。
敦は歯を食いしばり、踵を返して走り出した。
助けてくれた,名も知らぬ青年の為にも。
『一刻も疾く止めないと…!』
***
目を凝らして少年の走る姿を見つめる。
『そうだ,走れ。どんどん走れ」
銃撃は周りにある地面を抉っていく。
尖った石が自分の頬を掠ったが,拭いもせず空を見上げた。
「………余所者にこの街を渡すものか」
第104話「暗闇から救ってくれたのは」→←第102話「最も忌み嫌われる異能力」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» あけましておめでとうございます!随分と遅くなってしまいましたが、喜んで貰えて光栄です!私も乱歩さん大好きなので、また蓮華と絡ませようかなと考えております!汚濁の中也さんも本当良いですよね!!これからもよろしくお願いします!! (2020年1月2日 13時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - ありがとございます!!本当に乱歩さんかっけぇ…汚濁の時の中也かっけぇ…そしてあけましておめでとうございます!! (2020年1月2日 12時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - みんみさん» ありがとうございます!気に入ってくれたようでとても嬉しいです!まだまだ未熟者ですが・これからもよろしくお願いします! (2019年10月23日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - もうどハマりしてます!!ゆっくりで大丈夫ですので続きを楽しみにしてますね! (2019年10月23日 2時) (レス) id: c8f4f596b6 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!これからも頑張って続けて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時