第101話「政府との交渉、そして追憶」 ページ17
「蓮華ちゃんがどうかしたの?」
太宰が安吾に聞き返す。
安吾の声には何故か緊張感が増していた。
「彼女は吸血鬼であると聞いていますが………それは事実ですか」
「そうだよ。でも彼女は人を吸い殺そうとする様な真似はしない」
「…特務課の凡ゆる情報を洗いざらい探しても,彼女の情報は一切出て来ませんでした。まるで存在してなかったかのように」
「知ってるよ。マフィアに潜入した時も探したけど何も無かった。
出会った時かなり薄着だったし,一応人身売買の線も考えたけど_____」
その時太宰はある事に気が付いた。
安吾は“花柳蓮華”の情報は一切無かったと云った。
しかし“吸血鬼”の情報については何も云っていない。
「存在するのかい?…あの子と同じ者が」
「…正しくは存在していた,です」
安吾は車を路肩に停めて少し考えた後,ゆっくり話し始めた。
「現在ヨコハマで確認されている吸血鬼はたった二人です。
二人とも死亡が確定していますが,一人は遺体が見つかりませんでした。しかし当時現場に切り落とされた片腕と片脚が残されていた事から死亡と判断されました」
「成る程ねえ………」
「それに………」
安吾が車のハンドルに力を入れた。
それは微かに震えている。
「…僕は彼女の顔を見た時、驚きを隠せませんでした。
こんな事があるのかと。もしかしたら…再びヨコハマが殺戮に支配されてしまうかもしれない。そうなれば誰もが命を落としかねない」
「安吾?…一体何の話をして」
少し沈黙が流れたが,安吾は冷静さを失ったかのように声を発した。
「太宰君。彼女を決して吸血鬼にしてはいけません。
もしも何か異変があればすぐに連絡して下さい」
「待ってくれ安吾。蓮華ちゃんには一体何が…」
「詳しくは云えません。ですが,これだけは云えます」
赤髪の吸血鬼。この戦争の鍵。
誰もが知り得ないその秘密。
「彼女は死神の…」
しかし言葉は途切れた。
二人が乗る車に,別の車が衝突していた。
***
その人物は,血塗れで立っていた。
足元には自分が惨殺した死体が転がっており,握り締めた双刀も真紅に染まっていた。
「………」
雨が身体を打ち付ける。
心の寂しさや虚しさを紛らわせるように無理矢理口角を上げる。
「ふふっ……あはははははははははっ!」
直後,その人物も地面に転がっているものと同じになった。
_____これは遠い昔の悲劇。
第102話「最も忌み嫌われる異能力」→←第100話「異能特務課とは」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» あけましておめでとうございます!随分と遅くなってしまいましたが、喜んで貰えて光栄です!私も乱歩さん大好きなので、また蓮華と絡ませようかなと考えております!汚濁の中也さんも本当良いですよね!!これからもよろしくお願いします!! (2020年1月2日 13時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - ありがとございます!!本当に乱歩さんかっけぇ…汚濁の時の中也かっけぇ…そしてあけましておめでとうございます!! (2020年1月2日 12時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - みんみさん» ありがとうございます!気に入ってくれたようでとても嬉しいです!まだまだ未熟者ですが・これからもよろしくお願いします! (2019年10月23日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - もうどハマりしてます!!ゆっくりで大丈夫ですので続きを楽しみにしてますね! (2019年10月23日 2時) (レス) id: c8f4f596b6 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!これからも頑張って続けて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時