第100話「異能特務課とは」 ページ16
蓮華は中也の後ろ姿が闇に溶けて消えるまで見送っていた。
思わず安堵していると肩を力一杯掴まれる。
「蓮華…自害しようとしたって…本当かい?」
「………………はい」
「勿論詳しく聞かせてくれるんだろうね?」
恐る恐る振り向くと,与謝野は笑っていたが何か不穏な空気を纏っていた。
その気迫に蓮華は何も云えず頷く事しか出来なかった。
***
旧晩香堂に戻ると,事務員の無事が確認されたと連絡があった。
しかし其処でマフィアの強力な異能者が現れたらしい。
「そこで我々は政府機関との交渉を行う」
『政府機関?』
福沢は険しい表情で告げた。
内務省には異能力や,異能組織犯罪を取り締まる“異能特務課”というものがある。
其処から圧力をかけて組合の動きを封じる,という事らしい。
「太宰が政府のエージェントと交渉に向かった。
異能特務課なら何とかなるやもしれん」
三組織の戦争は政府機関をも巻き込み始めた。
敵対するマフィアと組合はそれほどに手強い相手なのだと改めて思い知らされる。
締め付ける不安と共に浮かんで来るのはある男。
『太宰さんは………無事やろうか』
この世界で初めてを受け入れてくれた人間。
今頃政府の人間と交渉に向かっているのだろう。
だがその間に敵の攻撃があったらと思うと,心配で堪らなくなる。
自分に出来る事は,ただ彼の無事を祈る事のみ。
「どうか………無事で居て」
目を伏せて祈るように呟いた。
誰にも届かなかったその言葉は,彼女の心だけに反響した。
***
「何年振りですかねぇ太宰君」
内務省・異能特務課・参事官補佐
坂口安吾_____能力名『堕落論』
政府との交渉は不穏な空気だったが,それは最初だけだった。
現在は車で移動しながら交渉しているのだが,それは太宰が最も避けたかった結果となった。
「知ってて…放置してたって事かな?」
異能特務課は組合の行動を把握しながらも,それを放置していたのだ。
「政治ですよ、太宰君」
組合は外交筋から圧力を掛け,構成員に外交官同等の権限を付与させた。
権力と財力を持って異能特務課にも圧力を掛けていたのだ。
「………それはまずいね」
組合は相当厄介な相手だった事が判り,太宰の表情に焦りが滲んだ。
すると安吾がまた別の緊張感を走らせて云った。
「太宰君…一つ聞きたい事があります」
その顔は青白く,瞳には恐怖が滲んでいた。
「花柳蓮華という,少女についてです」
第101話「政府との交渉、そして追憶」→←第99話「情は捨てきれない」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» あけましておめでとうございます!随分と遅くなってしまいましたが、喜んで貰えて光栄です!私も乱歩さん大好きなので、また蓮華と絡ませようかなと考えております!汚濁の中也さんも本当良いですよね!!これからもよろしくお願いします!! (2020年1月2日 13時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - ありがとございます!!本当に乱歩さんかっけぇ…汚濁の時の中也かっけぇ…そしてあけましておめでとうございます!! (2020年1月2日 12時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - みんみさん» ありがとうございます!気に入ってくれたようでとても嬉しいです!まだまだ未熟者ですが・これからもよろしくお願いします! (2019年10月23日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - もうどハマりしてます!!ゆっくりで大丈夫ですので続きを楽しみにしてますね! (2019年10月23日 2時) (レス) id: c8f4f596b6 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 海石榴《ツバキ》さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!これからも頑張って続けて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時