第71話「白い襟巻きの青年、再び」 ページ28
「あー………暇や」
中也が出て行った後，蓮華はベッドに寝転んでぼんやり天井を眺めていた。
正直云って，やる事が無い。
誰でも良いから話し相手が欲しいなと思っていたが，捕虜の異能者_____ましてや吸血鬼と話そうと訪れる者なんて居ないだろう。
「………美味しかったな，中也さんの血」
恍惚とした表情でぽつりと呟いた。
これまでに何人もの血を吸ってきたが，彼は太宰にも引けを取らない程に魅惑だった。
一度その味を覚えてしまえば，ニ度と忘れる事は出来ないだろう。
『………そう言えばあの首領…文豪の名前だった』
先程対話した男，確か森鴎外という名前だった。
そして傍にいた幼女は名をエリスと云った。
エリスとは確か森鴎外の作品に出てきた登場人物だった気がする。
『という事はあの男も異能者で……幼女は異能に関係した存在って事？』
しかし谷崎とナオミは兄妹なので，普通に親族なのかもしれない。
それでもあの男の幼女への溺愛ぶりにはドン引きだが。
「………お腹空いたかも」
血を飲んだ後は，身体が人間として機能し始める。
急激に空腹になったり，夜はぐっすりと眠りやすくなったり。
後天性に吸血鬼になったとは言え，所詮はただの人の子だ。
その事に少しだけ安心を覚えて目を閉じると，いつのまにか蓮華は夢の世界に身を預けていた。
「……………………」
彼女が深い眠りについた後，ぼんやりと人影が浮かんだ。
扉を開けた訳でもなく，誰にも知られる事なく現れたその人影は、ただ彼女が眠る寝台の脇に立つ。
「………桜」
それは蓮華が白い虚無の世界で出会った，あの男だった。
白い襟巻きの隙間から彼女を見据え，片方しかない腕で蓮華の頭を撫でる。
「………良かった」
そして眠る蓮華の額に手をかざした。
優しげな青白い光が彼女を包み込む。
「…！」
何かの気配に，男は顔を上げた。
扉の向こうから誰かの足音が聞こえたのだ。
コツ，コツ，コツ，
真っ直ぐに此方に向かっていると確信した男は，彼女の額から手を離した。
そして影に溶け込むようにして姿を消した。
扉が開いたのはその直後だった。
＊＊＊
7000hit超えましたやったね！！
本当にありがとうございます！これからもよろしくお願いします！！
☆星木雪野☆
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
