第4話「吸血鬼と文豪達」 ページ6
「ついて来たまえ。敦君、何が食べたい?」
「はあ……あの………茶漬けが食べたいです」
“茶漬け”
餓死寸前なのにそんな質素なもので良いのか。
そう思っていると青年は声を上げて笑っていた。
どうやら彼の発言がお気に召したらしい。
「良いよ。国木田君に三十杯くらい奢らせよう。蓮華ちゃんは?」
「いえ,結構です。お腹空いてないので」
実際は貧血で食欲が無い,が本音である。
しかし此処で『生き血が欲しい』なんて云える訳がない。
「そうかい?国木田君のお金だから遠慮しなくて良いのだよ?」
「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰!」
「……太宰?」
いよいよ嫌な予感がして来た。
苗字を聞いただけで下の名がすぐに思い付く。
信じられないこの状況に思わず生唾を飲んだ。
「あぁ、私の名だよ」
__________この男の名は_________
「太宰、太宰治だ」
風が少女を歓迎するかのように通り過ぎた。
***
見事な食べっぷりだ、と蓮華は感心した。
賑わう食事処にて隣で敦が茶漬けをかき込んでいる。このスピードでは本当に三十杯いきそうだ。
「おい太宰早く仕事に戻るぞ。仕事中に突然「良い川だね」とか云いながら川に飛び込む奴がいるか」
「…何してるんですか良い大人が」
「おかげで見ろ。予定が大幅に遅れてしまった」
「国木田君は予定表が好きだねえ」
すると国木田が手帳を机に叩きつけた。
「これは予定表では無い!!理想だ!!我が人生の道標だ。そしてこれには『仕事の相方がジサツ嗜癖』とは書いていない」
この人も苦労してるんだなあと思いつつお冷を飲む。だが血を欲している喉はなかなか潤ってくれなかった。
「ぬんむいえおむんぐむぐ?」
「五月蝿い。出費計画の頁にも『俺の金で小僧が茶漬けをしこたま食う』とは書いてない」
「でしょうね」
「んぐむぐ?」
「だから仕事だ!!俺と太宰は軍警察の依頼で猛獣退治を____」
「君達なんで会話できるの?」
「敦さん行儀が悪いですよ」
突っ込みどころ満載の会話に溜息が溢れる。
「それに敦さん、米粒付いてます」
「えっ何処…」
「此処」
蓮華は頬に付いている米粒を指で掬い、そのまま口に運んだ。
その様子に敦はあからさまに頬を染めた。
「あ、ありがとう…」
「どういたしまして」
わかりやすい反応に思わずクスクスと笑ってしまう。
『やっぱ初心やなあ』
何故か大人二人に凄い目で見られたが気付かないフリをした。
第5話「吸血鬼は色々と複雑」→←第3話「包帯さんは危ない人」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時