第13話「彼女が追い求めたもの」 ページ15
乱歩は澄んだ翠の瞳を少女に向けて話した。
「見たところ、この子は身元を特定するものを持ってない。それにそんな格好でわざわざヨコハマに来たとも思えない」
今の彼女の服装は丈の短いワンピースに襟巻、足には何も履いてなかった。
とてもではないがこの時間で出歩くには薄着すぎる。
「身体に傷があるあたり、貧民街の子かい?」
「それにしては服が綺麗だ」
「成る程、身元不明の少女か…どうする太宰?」
「それにしても綺麗な赤毛ですねー」
「賢治君もそう思うかい?まるで花弁のようだよねぇ」
「二人共やめろ!寝てる娘で遊ぶんじゃない!」
二人が気を失った蓮華の髪を弄りだした為、国木田が怒声をあげる。
彼女の髪を梳きながら太宰はうーんと考え込むと、閃いたというように提案した。
「じゃあ私が彼女を引き取ろうか!」
国木田は2回目の絶叫をあげる事になった。
腕の中の彼女は氷のように冷たかった。
***
『穢らわしい色だ』
『気持ち悪い』
『お前は不幸を呼ぶ悪魔だ』
そんなの,とっくに知ってる。
『こんな見た目でも顔だけは綺麗ね』
『売ったら金になりそうだ』
『貴女は此れくらいしか使い道が無いのだから』
言われなくても解ってる。
だから,孤独を選んだ。
「私だって吸血鬼なんてなりたくなかった!」
彼女が自ら閉じこもった“孤独”という殻は,既に強固な檻となり,自力で抜け出す事は出来ない。
「ねえ、どうして私を否定するん?私が吸血鬼やから?人やないから?」
寂しい、怖い。
誰でも良い、自分を肯定してくれるなら。この檻から出してくれるのなら。
いつの間にか暗闇が覆い隠し,彼女は悟る。
嗚呼、きっと自分は死ぬまで孤独のまま枯れ果て朽ちていくのだ。
「ならいっそ殺されたって良い。死んだって構わないから」
何も無い虚空の彼方に彼女は手を伸ばす。
「何処にも行かないで,誰か助けて……」
その時、彼女の手に暖かいものが触れた。
感触からして誰かの手だと判った。
________では,助けてあげよう。そばにいてあげる
その言葉に涙が溢れた。
初めて自分を肯定してくれた気がした。
思わずその暖かい手に縋り付くように頬に当てる。
「あり、がと………」
そして少女は瞼を閉じて眠りについた。
その瞬間は、酷く心地が良かった。
「どういたしまして」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時