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第22話「赤い髪をなびかせて」 ページ24

窓枠に脚をかけ、下を確認する。
外は人が沢山居たが、走行している車の上を足場にすれば何とかなるだろう。



「何をしているんだ娘!」



国木田の声に振り返って微笑む。
口元から牙が覗き、赤い髪が風になびいた。



「私は異能力なんて持ってませんし、他者と馴れ合うつもりもありません」



そして何の躊躇いもなく、少女は飛び降りた。
手前の道路を走る車の上に着地し、勢いを付けて跳躍。そして反対車線の歩道に着地した。



「この身体能力は吸血鬼になって得したなぁ……」



朝に血を吸えたのも幸運だった。
でなければ逃げる事さえままならなかっただろう。



『……此処はもう私の居た世界やない…』



此れが一晩かけて彼女が出した答えだった。
でなければ刺し殺された自分が生きてるなんて説明出来ないだろう。
それに此処が違う世界であろうと無かろうと、彼女にしては大したことない。
何故なら彼女は__________吸血鬼だから。



「どちらにせよ、この世界にも同族なんて居らへん…」



人間が支配するこの世は彼女にとって孤独だ。
それは彼女が何処に居ようと変わらない。
ならば最初から誰とも関わらなければ良い。



「如何するかは,これからゆっくり考えましょう」



時間は沢山あるのだから。
蓮華は楽しそうに口角を上げると、電柱などを足場にしてビルの屋上に登った。
すると街の向こうに海が見えた。



「綺麗。ヨコハマは街並みが美しいんやね」



海の匂いがする風が彼女の頬を撫でる。



「さて,何処に行こうか」



あの世界には吸血鬼なんて居なかった。おそらくこの世界でも同じだろう。
少なくとも暫くは自身の正体を隠さなければならないが。



『彼の人には,悪いことしたかもなぁ』



脳裏にあの包帯男と甘い血の味を思い出した。
しかしすぐに頭から消し去った。



「取り敢えず港にある一番大きなビルまで行ってみよう」



そう云って少女が脚に力を込めたその時だった。
彼女の瞳が僅かに開いた。



「………今のは」



普通なら感じ取れない硝煙の匂い、銃声のような音。
吸血鬼故に五感,特に嗅覚が鋭く彼女は直ぐに判った。



「彼方か………?」



風に漂う匂いを頼りに向かうと、路地の近くに辿り着いた。
どうやら此処は路地が多いらしい。



「………うわぁ」



建物の上から様子を伺った蓮華は口元を引きつらせた。



「マジ物騒やなこの世界」

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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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