No.6 ページ6
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少女の名前はAだ。
名字は、ない訳ではないが、名乗る時は名前だけにしている。
酷い親の元で生まれた。
母親は物心つく前に、冬の凍てついた路地裏でくたばっていたらしい。
残された父親は元々就職に失敗したニートで、風俗嬢だった母親の稼ぎに胡座をかいていたから、すぐに金が無くなった。
ギャンブルと酒と女とヤク。思いつく限りの堕落を経て、男はとうとう闇金に手を出した。
Aは五歳の頃に、児童養護施設に預けられた。捨てられたといった方が、言葉の誤解がなくて済むかもしれない。
そこもまた酷いところだった。
食事もまともに出されなかった。二十人もの痩せっぽちな子供達が、僅か二つの生卵を巡って殴り合う日々。時には施設の職員が、説教と評して散々子供を殴り、嬲り、犯す。それが当たり前だった。
Aは、真っ平御免だと思った。
そんな人間の元で頭を下げて生きていくのも、そんな人間に好き勝手されるのも。
私は私だ。
私の人生だ。
そう思ったから逃げ出した。十四の冬の頃だ。
義務教育は一応受けていた。高校受験に勤しみ生徒達のお陰で、教育課程の勉強が全て終わったから、もう逃げてしまおうと思った。
親から逃げて、今度は施設から逃げる。
自立して生きていくために。
そう思って飛び出したが、右も左も分からなかった。
世界はAが思うより随分広い。
僅かにくすねてきた小銭もすぐ底をついて、明日をどう生き長らえようと歩き続けて、ようやく出会えたのが、前歯が欠けたとある男だった。
義爛。ヴィラン社会では名の通っている大物ブローカー。斡旋も武器取引も、彼の手にかかれば何でも叶う。
ただし、彼のお眼鏡に叶わなければ顧客になれないのだとか。
｢普通はガキ一人行き倒れてようが放っておくさ｣
とは彼の目の前で気を失ったAが、真っ白なシーツの上で目が覚めた時、義爛が言った言葉だ。
義爛はAが体格のいいヴィラン数人に囲まれ、好き勝手されそうになるところを見ていたらしい。
Aが、そのヴィラン共を素手でのしたところも。
｢お嬢ちゃん、才能あるよ。俺が依頼を受け付けてやろう。一発当たれば、一年は暮らしに困らなくなる｣
義爛にそう言われ、そうかと思った。
食わなきゃ人は生きてられない。
Aはまだ、死にたいと思えるほどこの人生に絶望していない。
Aが“ヴィラン殺しのヴィラン”として恐れられる様になったのは、それからすぐの事だ。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
