No.41 ページ41
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｢お前は、将来ヒーローになる男か｣
ガコッ、と音がした。
見れば、ボロ雑巾の様な黒のマフラーをした身なりの汚い男が、傍に転がるゴミ箱を踏みつけていた。半分割れたそのゴミ箱が擦れあって出た音だった。
『ヴィラン名はタカ。接触したヒーローは計十六人。うち五人が殉職している』
ヒーロー殺し・ステインの信奉者。
｢あんた、タカか｣
情けなく声が震えた。今すぐテンライの元に駆け寄りたいのに、それすらもできないのは男から発せられる無尽蔵な殺意のせいか。
USJの時や林間学校の時とは比にならない恐怖心が指先から伝播した。
上鳴は今まで、事件には巻き込まれても、現場に遭遇した事はない。
勿論襲撃してきたヴィランは相応に怖かったし、林間学校の時も、友人を失うかもしれないと不安だった。
でも、不安だっただけだ。
上鳴は別に、凶悪なヴィランと対峙した訳でも、危機に扮した友人を助けに行った訳でもない。
だからこそ、今分かる。ステインと戦った緑谷達の恐怖を、拐われて助けを待つしかなかった爆豪のやるせなさを。
｢ああ、そうだな。父の故郷の言葉だ。意味は“汚れ”。俺にピッタリだろう。誰も知らないから、名前の由来を聞かれてはうんざりしてた｣
タカは、まるで自分の足元にある血溜まりなど見えてないかのように目を細めた。
震える唇を何とか動かして、場を持たせようと言葉を紡ぐ。
｢あんた、大罪人だって自覚はある？｣
｢さあな。大義に従っただけだ。で、お前はヒーローか？｣
まるで日常会話の様な、不気味な穏やかさがあった。
男の持つ、狂気に支配されていない理知的な声音からか。連続殺人犯というのは、もっとこう、頭がおかしくなった奴じゃないのか。
見境なく襲わない所が、余計に恐ろしかった。
もしここでもヒーローではないと言ったら、上鳴は殺されるのだろうか。いや、否定した所で目撃者の声はなるべく排除したいだろう。どっちみち上鳴は今、命の危険に晒されている。
もうどうにでもなれ。
恐怖に支配されていたはずの唇が、綺麗な三日月を描いた。
｢ああ、そうだ。俺は将来ヒーローになる男だ。だからタカ、大人しく捕まってくれ！｣
『無差別放電』！
そう言って、上鳴が個性を発動しようとするよりも前に、タカは地面を蹴って上鳴に迫っていた。
あまりの速さに咄嗟に反応ができない。
細く差し込む太陽に、タカが振りかぶったナイフが反射した。
｢さよならだ、ヒーローの卵｣
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
