No.34 ページ34
・
｢あ”？何だテメエ｣
Aの声に、三人がバッとこちらを振り向いた。
怖い。
｢人が嫌がる事はしない方がいいと思うよ。これは個人的な見解だけど｣
｢あ”ァん？ガキが偉そうに説教垂れてんじゃねえぞォ！｣
男が乱暴に腕を引くから、腕を掴まれたままの少女も体勢を崩した。たたらを踏む少女と目が合う。怯えの中に潜む確かな“強さ”に惹かれた。
｢とりあえず、その子の手ぇ離そう。鬱憤を晴らしたい気持ちはよく分かるけど、相手なら私がするから｣
｢え？ちょ、何言ってんのアンタ！｣
少女が焦った声を出す。
男はそれすらも不快だと言いたげに舌打ちをした。
｢そう言ってテメエ、手ェ離した隙に逃げて警察呼ぶんだろうが。魂胆が透けて見えるんだよ！うぜえなあ｣
ギリギリと音が立ちそうな程、男の手が強く握り込まれた。僅かに呻き声を上げた少女の顔を見て、もう一度イマジナリー義爛に謝罪する。
ごめん義爛。
苦痛に歪んだ少女の顔に仄暗い愉悦を湛えて笑った男が、次の瞬間には地面に突っ伏していた。
ドン、と鈍い音が遅れて鳴った。
｢･･････は？｣
｢だから言ったでしょう、手を離そうって。話せば分かってくれると思ってたんだけどなあ｣
男の、少女の腕を掴んでいた方の腕の、手首にある神経の集まった場所を手刀で叩き落とすと、そのまま腕を捻りあげて横に薙ぎ倒す。片膝を着き、男の肘をガッチリと固めた。
恐らく何が起こったのかすら、男には理解出来ていないだろうが。
｢あんまり
固めた肘に力を入れると、直ぐに男が情けない呻き声を上げた。
唖然としているだろう少女達の方は怖くて見れないので、男の薄くなった頭を見下ろして話を続けた。
｢おじさん、身なりからして良い暮らししてたんだろ？何でイライラしてんのかは知らないけど、その生活ドブに捨てるのは勿体ないと思うよ。余っ程大義がなければ絶対後悔する。今なら見逃してあげるから、今やった事もやられた事もなかった事にしてさっさと逃げな｣
そう言って腕から手を離して立ち上がると、恐る恐る固められた肘を動かしながら、緩慢な動作で男が立ち上がった。
A達を見下ろす瞳は、幾分か理性を取り戻していた。
元は思慮深い奥手な人間なのだろう。
｢なに。今更通報なんかしないって。さっさと逃げなよ｣
もう一度促すと、男は黙って公園から出て行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
