No.33 ページ33
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｢おい！女のガキが調子乗ってんじゃねえぞ！｣
明らかに厄介な雰囲気が漂う罵声に、小さくため息をついた。
高級住宅街と高層ビル群の間に聳えるタワーマンションから約3km。昔ながらの商店街がある下町を散歩していると、表通りから少し外れた公園から男のがなり声が聞こえてきた。
気配を消して公園の傍まで近寄ると、中高生くらいの女の子二人と、でっぷり太った腹が見事な中年の男が対峙している。
どうやら長髪を蝶蝶結びにしている女子を、耳たぶからイヤホンのような線が伸びている女子が庇っている様だ。
“平和の象徴”の事実上の引退から、ぽこぽこと茹で上がった地獄の釜の様に、日本各地で犯罪件数が増加していた。
恐らくあの男もその類なんだろう。抑圧されてきた鬱憤が、平和の象徴が消えた事で爆発した。
阿呆だな。Aは心の中で一蹴した。
男が、長い髪の少女を庇うもう一人の少女の腕をむんずと掴んだ。少女の顔がはっきりと怖ばった。
男が怒鳴り始めた所からしか聞いていないので事情は全く分からないが、嫌がっているのは確実である。
｢謝罪の誠意が足んねえんだよォ、謝罪の誠意がよォ！！｣
｢私達に非はないわ、だから耳郎ちゃんを離して！｣
｢うるせえ！大体元はと言えばお前が悪ぃんだろうがァ！｣
腕を掴まれていない方の少女が友達の腕を掴む男の無骨な腕を手で抑え、毅然とした表情で言い放つ。
それに逆上した男が怒りで耳まで赤くし、更に大きな声で怒鳴った。
高級住宅街から3kmも離れれば、こんなに治安が悪くなるのか、とAは少し驚いた。この騒ぎに、普通なら近隣住民が集まるか、通りすがりの人間が通報していてもおかしくないのに、ここら一帯には彼女達とA以外、全く人の気配がなかった。
｢警察に通報するよ、おじさん！｣
｢あ”ぁ！？｣
おいおいおいおい。
Aは顔を引き攣らせて三人の攻防を眺めていた。
暴漢相手に理屈を通そうとしても、話が平行線を辿ったままだ。ただでさえ相手は理性を失っているのに、正義を訴えた所で逆上するのがオチ。
Aの経験則通り、男の顔からストンと表情が抜け落ちた。
｢そうかよ、ああそうかよ、なら警察呼ばれる前にお前らシバいてムシャクシャした気分を晴らさせてもらおうか｣
『いいか。厄介事には絶対首を突っ込むなよ』
義爛には当分会えそうにないので、イマジナリー義爛に謝った。
｢ねえ、お姉さん達嫌がってるよ。その辺にしておけば？｣
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
