No.31 ページ31
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｢一ヶ月は隠れておいた方が身のためだと思うぜ。お嬢ちゃんだって、まさかヴィランの飼い犬になる人生なんざ送りたくないだろ？｣
義爛がそう言うと、Aはむっすりとした顔で黙り込んだ。暫く、静かな沈黙が二人の間に生まれた。
｢･･････父親の借金、返さないと｣
律儀な奴である。
そういう所がヴィランらしくなくて、ヴィラン向きなんだよなあ、と義爛は思ったが、口にはしなかった。
この痩せっぽちな少女には、義爛を一瞬で殺める力が秘められているのだ。
義理に厚くて優しい“死神”が、依頼でもない殺しをするとは到底思えないが。
｢今のお前の貯金なら、一二ヶ月はあっちが決めた返済額くらい間に合う｣
｢一刻も早く返したい。父親はもう死んでるらしいからな。取り立てる相手が私しかいないんだ｣
｢死ぬよりマシだろうが。俺が貸した部屋で大人しくしてな｣
念を押してキツく言う。そうすれば、Aはキツく眉間に皺を寄せながらも一応納得してくれたようだ。
｢分かった。そうする｣
｢おう。そうしてくれ｣
逃走劇を繰り広げた名残の、ボサボサになった白銀の髪をガシガシと撫でてやる。Aの肩がビクリと震えたが、止めるでもなくされるがままになっている様子に、自分という存在が受け入れられている事を実感させられた。
信頼されている。ブローカーとしての腕も、己の人間性も。
それにできる限り答えるのが、義爛の仕事だ。
｢部屋が割れてる可能性もあるから、もしバレてたら俺のセーフハウスを使え。何件かリストアップして送るからそれを参考にしろ｣
｢給料から天引きされる？｣
｢いや、今回の騒ぎは俺の過失だ。迷惑料だと思って使ってくれ｣
Aは呆れた顔でため息をついた。
｢だから義爛のせいじゃないって言ってんじゃん。結果的に逃げてこられたし、気にする事なんかなんもない｣
｢そういう問題じゃねえよ。やっぱり信頼あって成り立つ仕事だからな。利害関係はしっかりしとかなきゃなんねえ｣
｢そういうもんなの？｣
｢そういうもんだ｣
ふーん、と呟いた声はあからさまに興味がなさそうで、嘘が下手だなと肩を落とす。ハニートラップが壊滅的に合わないタイプだ。そもそもできるかどうかは置いておくとして。
なるべく真っ新でいて欲しいというのは、あまりにも無責任な願いだった。
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
