No.30 ページ30
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禿げかけた塗装に、ちかちか点滅する店の明かり。隅のテーブル席を占領するのは、クスリで頭がイカれたのか、まともに言葉も喋っていない男共。
帰ってこれた。そう思えた。
｢悪かったな、お嬢ちゃん｣
珍しく気落ちした義爛の声に、｢ううん｣と首を振ってジンジャエールの入ったグラスを傾けた。
｢仕方ないよ。まさか藍瀬益治が公安のスパイだったなんて想像もつかなかったし｣
義爛は悪くない。悪いのは、リスクを冒してまで依頼を遂行しようとした馬鹿なAだ。
そう言っても、義爛は低く唸るだけだった。
｢俺とした事が、依頼すらまともに精査できねえなんざ、ブローカーの風上にも置けねえよ･･････｣
｢ブローカーにも色々あるんだ｣
｢当たり前だろ。信頼出来る依頼主と掛け合わせる仕事だぞ｣
依頼主も請負人もヴィランという点さえ覗けば、義爛は仕事に熱い真面目な男であった。
｢依頼主のヴィラン組織って、結局嘘っぱちだったの？｣
｢ああ。お前がヒーロー共に襲撃されたと同時に警察と別のヒーロー共がカチコんで、全員お縄につきやがった｣
ほら、と押し付けられたスマホの画面を見ると、確かに依頼主の組織名が夕刊の一面を飾っている。どうやらそっちのカチコミにはオールマイトも参加したらしい。キラリと光る歯が不自然なほどに真っ白で、アメリカンらしかった。
｢あーあ、依頼失敗しちゃったなあ｣
ふと思い出して呟く。
すると突然ニヤニヤしだした義爛が、悪戯をする子供のような顔で何やらスマホを弄り出した。
｢え、なに｣
｢それがな、これを見ろ｣
出されたのは依頼用の口座の残高。
一番上の欄を見て、お、と変な声が出た。
｢金が振り込まれてる･･････｣
｢な？｣
｢どういう事だこれ。ダミーの依頼とはいえ、こっちは失敗したんだぞ｣
困惑するAにどうしてだろうなあ、と義爛が嘯いた。
知るか。
｢気ィ狂ってんじゃないの｣
｢ちげえな。お前さんの実力と人気を、あちらさんも理解してるって事だ｣
だから何だと胡乱な目で義爛を見つめる。
義爛はふと、口元に淡い笑みを乗せた。
｢お前はもう、十分実力を知らしめたと思う。少し休んで、この騒ぎが落ち着くまで籠っておいたらどうだ｣
｢･･････は？｣
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リサ(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます！ (2021年12月7日 20時) (
レス) @page14 id: 942b3344d9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです！続き待ってます！！ (2021年12月7日 11時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
クレア - 文が多いのにスラスラ読めて楽しい小説ですね、ここ(占ツク)に少ない雰囲気の作品なので、ちょっとラッキーな気分です(笑)！こういうの、私は好みですよ。 (2021年12月7日 9時) (レス) @page4 id: 730c5fdade (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2021年12月6日 18時
