短編集 (ページ19)

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続きページ19

少年と話しはじめていったいどれくらいの時間が経っただろうか。
あの後、立ち話も疲れるしどこか座ろうという少年の提案により近くのバス停に腰かけている。

少年曰く、自分はカミサマなんだと語った。
思わず「はぁ？」なんてすっとんきょうな声が出た。

そんな訳がないと証拠を問えば、少年はどこからか取り出した乳白色の折り紙で蝶を折り始めたため、黙って見ていると、衝撃の光景を目の当たりにした。

それは、少年が折った蝶に息を吹きかけるなり、蝶は大きく羽ばたき頭上を何度か旋回した後、どこかに飛んで行ったのである。

もう信じるしかないか、と半ば諦めていたところ、少年はまたもや私の心を読んだかのように

「それでいいんだよ。」

と誇らしげに頷いていた。
……なぜ人の心を読めるのだ、こいつは。

「えー？それはね、カミサマだからさ！」

また読まれた……

というか、

「帰りたいんだけど。」

そう訴えれば、少年神は心底不思議といった様子でこう返してきた。

「え？なんで？」

それは、今までのからかうような声音というよりかは、本当に、純粋な疑問という感じで、そう問うてきた。

「なんでって……習い事があるからだよ。ピアノもヴァイオリンも塾も行かなくちゃ、」

「なんで？」

なんで、と言ったか、この少年神は。
だって、そんなの……

あれ、

「わからない、」

そんな言葉が口をついて出た。

なんで？どうして？私は何を理由にこんなに頑張っているんだっけ。

わからない。

「へぇ、、わからないのに、続けてるんだ？」

少年神にそう言われてどきりと心臓が跳ねた。

「それってさぁ、結局は───」

まるでその先の言葉を聞くのを拒否するかのように、心臓がどくどくと大きく脈打つ。

いやだ、やめて、聞きたくない。

「無意「やめて！！！」……へぇ」

思わず大きな声が出た。

違う、違う、絶対に。そんなことない。そんなはずない。
だって、だって、お母さんの言うことは正しくて、お父さんの言うことは絶対で、

あの人たちの言うことを聞いておけば、私は、真面目で、いい子な優等生になれるから。

「やめた方がいいよ、それ。そのままいけば、いつしか君は後悔することになる。」

わからない

わからない、！

わからない！！

私って、何？

まるで、自分1人だけが取り残されたような気がして、いつの間にか降りだしていた雨には気付けなかった。