サディストの幸福理論［続きです］ (ページ7)

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13話ページ7

『…アヤカさん』
「、うん」

あぁ、手が震える。これから人を殺すという莫大な恐怖感に。
でも、やらないと。これが最初で最後のデスゲームなんだから。
私がこの最悪なゲームに、終止符を打つんだ。

「りのちゃん、いいよ。」
『うん。…ごめんね』
「そうだなぁ…私は、ごめんねじゃなくて、またねがいいな。」
『…！うん。アヤカさん、またね。』
「バイバイ、またね。りのちゃん！」

アヤカさんの上に馬乗りになってそう言葉を交わしたら、

心臓にナイフを

一突き

二突き、確実に。

部屋に静かに響いていた二人分の呼吸音。
1つは段々とか細くなっていって、最後には私以外の呼吸する音は聞こえなくなった。

いつの間にか私が着ている服は真っ赤になっていて、
顔にはもう誰のものかも分からなくなってしまった真っ赤なソレがべっとりとこびりついている。

殺してしまったという莫大な罪悪感と、あとから押し寄せてくるあのゾクゾクとしたよくわからない「ナニカ」

ユアさんはリーダーシップを取るために、皆の為に犠牲になった。

ハヤトくんは私を庇ったせいで皆に殺されてしまった。

アヤカさんは最後まで私のことを気遣ってくれた優しい心の持ち主だった。

…？
私は？このゲームで皆に何か一つでも貢献するようなことはあったか？
ユアさんのように、ハヤトくんのように、アヤカさんのように何かしたか？

(なにも、していないじゃないか…！)

まただ、またなにもできなかった。あぁ、怒られてしまう。殴られてしまう。

(もう痛いのは、嫌なのに、なぁ…)

真っ赤に染まった部屋の中、少女はただ一人、絶望して立ち尽くした。

　ピーンポーンパーンポーン

アナウンスの音が響き渡る。いつもより音が大きく聞こえる。ガンガンと頭に響く。

『こんにちは！この度はご生存、誠におめでとうございます！どうやら貴方は名前の通り、本当に「倖せな仔」のようですね！それでは、約束通り貴方の願いを叶えましょう！』

アナウンスはなんだか元気だ。いや、もうどうでもいいか。

(私の、願い…か)

私の願いって、なんだろう。