サディストの幸福理論［続きです］ (ページ5)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:787 hit

11話ページ5

真っ白で何もなかった部屋の壁には真紅の壁紙が貼られていき、クラスメートだった人達が横たわっている。

部屋の中が赤く紅く染まっていく。

聞こえてくるのは───

───悲鳴

─泣き声

───奇声

─笑い声

そんな声が四方八方から聞こえてくる。

これぞまさに阿鼻叫喚の地獄だな、とまるで他人事のように考えながら逃げ回っていた。

段々と静かになってくる部屋の中。
それでもやっぱり完全に終わったわけではなくて「ｸﾞｼｬﾘ」「ﾋﾞﾁｬﾘ」と時折不快な音がなって、静かな笑い声、小さな泣き声が聞こえてくる。

それでも、足を止めることは許されない。正気をしっかり保つように、一歩一歩、床を踏みしめながら走って逃げる。

進む度に

　ﾊﾟｼｬﾘｸﾞﾁｬﾘ

と嫌な音がなる。何の音かは分からなくて、理解かりたくなくて、床を見ないようにして前だけを向いて逃げ続けた。

本格的に静かになった部屋。先程の様な不協和音は聞こえなくなった。

部屋の中をぐるりと見回すともう誰も動いていなかった。
こんな状況下に置かれてるのに案外冷静でいれている。いや、脳が処理しきれていないのだろうか？

そんなことを考えながら部屋の中を散策する。

すると小さく震える背中を見つけた。…声をかけた方がいいのだろうか。

(まぁ、物は試しだ。駄目なら……いや、考えないようにしよう。)

『えっと、、大丈夫？』

試しに声をかけてやると肩を大きく震わせておそるおそるこちらを振り返る。
この人は確か……アヤカさんと言ったか。

…会話できるだろうか

「ﾋｯ…あ、えっと…だ、大丈、夫。」
『そう。よかった』
「…もう私達以外誰もいないの？生き残った人。」
『…残念だけど、いないみたい、』
「そっ、か…これからどうしよっか。」
『そうだね。何処にも出口らしきものは見当たらないし…』
「少しだけ、待ってみようか。」
『…うん。そうだね。』

それからは、ただひたすらに待った。待って待って、待ち続けた。

それはもう、何時間待ったかもわからないくらいに。
もしかしたら数分しか経っていないかもしれないし、数秒しか経っていないかもしれない。二人で待ち続ける沈黙の時間は果てしなく続いているような気がした。

しかし、一つ確かなことがあるとすれば、そんなことがわからなくなってしまうくらいには疲れていたということだろうか。