サディストの幸福理論［続きです］ (ページ13)

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18話ページ13

「足りない」

しばらくして不意にそんな感情が私を支配した。

あぁ、まだやりたい。足りない。足りない足りないたりないたりないタリナイたりなイたりなぃたり無いタリないﾀﾘﾅｲたりなィtりない田りないたり内足り無いタりナイ多利ナイたりない。

(あぁ…まだいるじゃないか。)

一番最後に残ったのはそう、紛れもない私だ。

ここまできたらもう死ぬことへの恐怖など感じない。
恐怖なんて感情はとうの昔に捨てた。否、死んだ。考えたところで今更なのだ。
だから何故こんなにも簡単なことに気づけなかったかが不思議なくらいだ。

笑顔で赤黒く染まったナイフの刃を首元に当てがって

「あぁ、わたし今、人生で一番幸せ！」

そう呟いた。
きっと今、私は酷い顔をしてるのだろう。

首元に当てがッた刃をグッと押し込むと刃が首に食い込む感覚と鈍い痛み。
これから死ぬというのに心はとても穏やかで、

(あぁ、そういえばあの小説、まだ読み終わってなかったな…題名はたしか…)

なんて、どうでもいいことを考えている。

まあこの際、そのことを咎める人物など誰もいない。段々と回らなくなってきた頭でゆっくりゆっくり、思い出そうとする。

1つの言葉が頭の中に急にぽんと出てきた。あぁそうだ、思い出した。あの小説の題名は

(とある双子人形のお話…だったか。)

思い出した途端、強い眠気のようなものが襲ってくる

『ぉ、ヤすミ、ナ、サィ…』

朦朧とする意識の中掠れた声でそう呟くと、視界は真っ暗になって私は意識を手放した。

─ハッピーエンド─ そして誰もいなくなった