第六章《僕と私》第二十八話 ページ2
9歳のAside(過去編)
私は生まれてすぐ捨てられた、らしい
勿論生まれてすぐなので母親の顔も父親の顔も見たことがないし今更何か言うつもりもない
保護施設には私のように何かしらの事情があって保護された子供たち、そして私たちの面倒を見てくれる大人の人達が数人
だんだん喋れるようになってきた4歳ぐらいのとき、静かに本を読んでいる私に話しかけてくれる子はちらほらいた
「いつも本読んでて楽しいの?」
「なんでいつも一人でいるの?」
「どうして何も喋らないの?」
こんな感じの無垢で純粋な同世代くらいの子達からの質問に私は答えなかった
感情の起伏を表すのが苦手だったからだと思う
そんなことを繰り返してるうちに私に話しかけてくる人は誰もいなくなった
話すことがほとんど無くなって、声の出し方忘れたんじゃないかと感じ出した今日この頃、いつものように本を読んでいると、聞いたことの無い声が聞こえてきた
??「何読んでるの?」
新しく入ってきた子なのかな?とは思いつつもいつものように何も言わなかったらすぐにどっか行くっしょ、って思ってた
けど、その人は違った
??「話しかけてるの聞こえないの?」
『…』
??「もしかして無視してる?だとしたら相当悪質だよー?(笑)」
『…(何笑ってんだこの人)』
??「喋ってくれないなら行っちゃうよー?」
『…』
??「あーはい、わかったわかった、」スタスタ
.
.
.
.
??「わああ!!!!!」
『おわっ?!?!』
??「やーっと声聞けた(笑)。てか、かわいい声じゃん?女の子みたい、」
『…です、』
??「へ?なに?」
『…私、女の子、です』
??「……え?、、えぇぇぇええ?!?!」
.
.
??「いやー、髪短いし服どちらかと言うとメンズよりだし、男の子かと思ったよ、ごめんね」
『いや別に、』
??「君名前なんていうの?あ、私は水瀬音羽(おとは)」
『…A』
音「へえ、A、か、いい名前だね」ヨシヨシ
私はこの時、初めて自分の名前がいい名前だと言われた
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作者名:もーん | 作成日時:2021年1月6日 11時