忘却狙撃手 (ページ2)

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「足りない物は…えぇと、マガジンが三つか四つは欲しいなぁ。グリップテープの手入れもしないとね…」

基地を出て喧騒のあふれる道を進む。

しばらく歩き、この国の中心ともいえる賑わった大通りで足を止める。

ここはユリシア共和国だ。そして私はこの国の一兵士として毎日を過ごしている。兵士は基地の宿舎で日々生活でき、軍服で過ごせて、おまけに食堂にて食事は配膳されるため実質衣食住は保証されているようなものだ。その上兵士という職業は身分として確立されているために中々便利である。

ユリシア共和国は国民の割に国土が広いため、中心地から隣国まで行こうとすると恐ろしいほどお金がかかる。それこそ兵士なんかの給料では足りないほどだ。

＿＿＿だから、私はまだここから逃げ出せないままでいる。

そんな考えを打ち消すようにゆるりと首を振り、大通りから少し道を逸れた裏通りに足を踏み入れる。ひんやりとした空気がたちまち身を纏い、それから逃げるように足を速める。

行き止まりの路地にぽつりと佇む、小さな行きつけの店の前で足を止める。

ドアを開けると、上についた小さな鐘がカランと音を鳴らす。すると店の奥からいつものマスターが出てくるのだ。

「やぁAちゃん、いらっしゃい。」

「こんにちはマスター、お久しぶりです」

そう言うとマスターはにこりと笑い、まぁ座ってよと椅子を勧めてくれる。ありがとうございますと返し座り込んだ小さな丸椅子はふかふかで。

知らず知らずのうちに口角が上がっているのにAが気付くはずもなく、それを見て微笑むのはマスターだけだった。