第1章−3− ページ3
夕餉を終え、湯屋へ行く準備をする。
この町の風呂は湯屋しかない。個人が風呂を持つなんて大名とか身分の高い人だけ。
ここの湯屋は城のすぐとなりにあって農民の色んな人が湯を浴びにくる。
経営者はもちろん僕のおじい様だし無料で解放している。
着替えと手ぬぐいを持ち湯屋へ行く。
部屋の前を通った時、誰かの声が聞こえ始めた。襖越しに耳を立てた。
「そういえば、森に立ち寄った人たちがね、崖に気をつけろって言ってたのよ」
「崖?」
「そう、あの森に崖なんてなかったのに...」
山の麓にある森。そこの近くには寺があり、そこでいつも時間を知らせる鐘が鳴る。
そして森に入ると神社。どんな神様が祀られているかは知らないが、狐の置物があった気がする。
あの森にはあまり立ち寄らないように言われている。
まあどうでもいっか、なんて思いまた再び風呂へと足を進めた。
湯屋に行くと沢山の人がいた。
「おっ、ゆうりさまも風呂かい?」
「はい!」
「可愛いわね〜、おばちゃんと一緒に行きましょっか」
「い、いえ!!僕は男ですし...!」
「うふふ、ごめんなさいね。ちょっとからかっただけよ」
それではまた、とおばあさんは女湯の方へ歩いていった。
可愛いと言われなれたつもりだが、やっぱりしっくりこない。男である者、何時でもかっこいいだと男らしいだのと言われる人にやってみたい。
せめて身長が伸びれば......そんなことを思い、僕も男湯へ向かった。
明後日が端午の節句とあってか、湯が香りの良い菖蒲湯だった。
ぽかぽかと体は温まり、だんだんと眠くなってきた。
「ふぁぁ...」
大きなあくびをする。
明日はどんなことをするんだろうという関心の反面、知らない人とちゃんと話せるかが心配になってくる。
知らない人と話すと何を言って良いのか分からず相槌ばかりになってしまう自分だ。
うとうととしながら寝室へと向かう。
行灯が部屋を弱く照らしていた。そこには父が文机に向かい、何かを読んでいた。
「また書物ですか?」
「ん、いや。これは瓦版だ」
「瓦版?」
「天変地異など心中のことが書いてあってな......いつか侑李も読むと良い」
「飢饉もですか?...あ、ーー藩が飢饉に陥ったと書いてありますね!一揆が起こらないと良いですけど...」
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ちあき(プロフ) - みたらしさん» ありがとうございます(;▽;)そう言ってもらえて嬉しいです!頑張ります!! (2017年1月19日 17時) (レス) id: e160cb7ab7 (このIDを非表示/違反報告)
みたらし - この作品大好きです。これからも更新楽しみにしてます^^ (2017年1月19日 2時) (レス) id: 9dd0152da4 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ふうさん» ありがとうございます! 変更せずに、考えた案を練りながらまた更新しようと思います...!お騒がせさせてしまいすみません! (2017年1月18日 20時) (レス) id: e160cb7ab7 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - AI やまちね loveさん» わざわざありがとうございます...!!また再び更新しようと思います!迷惑かけちゃって申し訳ないです... (2017年1月18日 20時) (レス) id: e160cb7ab7 (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - 【恐怖の美術館】楽しく読ませて頂いていました。今作も展開を楽しみにしております。お話変更という事ですが、されてもいいと思います。まだまだ序盤でしょうし、変えても良いかと思われます。更新楽しみにしております〜。 (2017年1月18日 19時) (レス) id: 528772c314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2017年1月15日 14時