02 毛玉 ページ3
僕、芦屋 A は、
今年から高校一年になる。
「ただいまー。」
買い物から家に帰ってきた
兄 花繪の肩に
白い毛玉が乗ってるのに気がついた。
『おかえり、花繪。』
妖怪であることは気がついたが
特になにか出来るわけでもないので
見えないふりをした。
「あ、Aー。
悪いんだけど、これ、冷蔵庫
しまっておいてくれない？」
無茶苦茶、顔色の悪い兄。
大丈夫か？
完全に懐かれてるみたいだけど…。
『いいよー。
花繪、顔色悪いけど大丈夫？』
「大丈夫…だと思う。」
そう言って部屋に戻って行った。
あれから、数日。
花繪は高校の入学式以来
ずっと、保健室にいる。
行きは保健室に運んで
帰りに迎えに行くといった具合だ。
とある日の早朝。
毛玉に向かって話しかけた。
もちろん、兄は寝ている。
『もふくん。
兄のことを
気に入ったようだね。』
《うん！花繪、優しい。好き。
でも、離れなきゃって分かってる。
恩もあるし、
これ以上、迷惑かけられない。》
『もふくんも優しいよ。
兄のために離れようとしてくれる。
大丈夫、心配しなくても。
もし、一度別れて
もう一度巡り会えたなら
そのときに恩を返せばいい。』
そう言って毛玉の頭を撫でる。
《ありがとう、A》
『どういたしまして。
もふくん、僕と話したことは
二人だけの秘密だよ。ね？』
《わかった！》
毛玉…もふくんは
嬉しそうに尻尾をふる。
その姿が妙に愛らしかった。
その日の夕方、
いつものように
保健室に行ったが花繪と
もふくんの姿はなかった。
翌日にはもふくんの姿はなく
花繪は元気になっていた。
どこかで元気にやってるといいな。
もふくん。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜月 | 作成日時：2020年9月17日 3時
