三百十六話 ページ21
彼女はどうやら心配してくれていたらしい。少しだけ眉根を潜めながらAに問うた。Aはくす、と笑って手の中にあるおにぎりを見つめる。
「気持ちを込めてたんだ、ずっと」
「気持ち……？」
「うん。皆の練習が上手くいったらいいなあ、とか。これ食べて頑張ってくれたらいいなあとか……」
ぎゅっと形が崩れない様に力を込めて握り、Aは盆の上に綺麗な三角形に出来上がったおにぎりを乗せた。そしておにぎりを見つめながらふっと、目を細めてAが呟く。
「一郎太くんが、食べてくれたらいいな、とか……」
「えっ？」
Aが零した言葉に秋は驚いた。目を大きく見開いて、Aを凝視している。Aは柔らかい、ここの所ずっと見られなかった穏やかな微笑を浮かべて秋の目を見た。もう彼女の目は迷いなどない。
「秋ちゃん。私、やっとはっきりできたよ」
「Aちゃん……」
Aは凛とした様子で、自分の意思を述べる。
「私、どうやったってやっぱり一郎太くんが好き」
その言葉は狭い部室内にしっかりと響いた。わいわいと騒いでいた春奈もそれに呆れた様子で付き合っていた夏未も作業をやめ、Aを見る。それでもAは言葉をつづけた。
「彼にとっては迷惑だって分かってる。……でも私は、別れたって一郎太くんが好きだよ。やっとわかったの、私自身が今一番大切に想ってるのが誰なのか」
「Aさん……」
夏未が思わずAの名を呟いた。Aと夏未はあまり話すことは今までなかった。傍観が主である夏未と、実践派のAでは中々話が合わないし、何よりあまり気が合わなかったのだ。だが夏未は今単純にAの言葉に感心していた。
何といっても夏未も恋する乙女である。想いを寄せる人への感情を何となく隠している。だからこそ、堂々とこの場で言ってのけるAを単純にいろんな意味で凄いと思っていたのだ。
「A先輩……。やっぱりお兄ちゃんのことは……」
しんと静まり返った部室で次いで春奈の声がする。春奈の声はAの言葉に喜びを感じつつも、どこか寂しげな色を滲ませていた。それは彼女の言葉にも現れている。Aは春奈の言葉にふっと悲しげに目を伏せた。
「鬼道さんのことは……、帝国に居た時からずっと好きだった。ずっと思い焦がれていたし、何より憧れの人だった。それは今でも変わらない、でもね……」
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麻衣蘭 - すみません。やすけさん宛です。 (2019年1月4日 8時) (
レス) id: 396c72dd9d (このIDを非表示/違反報告)
麻衣蘭 - さやさん» 完結おめでとうございます！お疲れさまでした。次回も楽しみにしています。ネットが悪く、なかなか読めなく申し訳ないです。これからも頑張って下さい。また覗きに来ます！ (2019年1月3日 22時) (レス) id: 396c72dd9d (このIDを非表示/違反報告)
羅星竜(プロフ) - 前回コメントさせていただいた者です、!!完結おめでとうございますｯ、!! これを読むのが毎日の日課になってます…、(´`*) これからも更新頑張ってください、! (2018年12月31日 10時) (レス) id: 3b120ff894 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - やすけさん、完結おめでとうございます！そしてお疲れ様でした。ここまで読み続けてきて本当に良かったと思っています。次回作であるエイリア編も是非楽しみにしていますね…！これからも夢主ちゃんと風丸くんの行く末を見守らせて頂きます…！ (2018年12月31日 9時) (レス) id: 8fe26207ce (このIDを非表示/違反報告)
やすけ(プロフ) - 麻衣蘭さん» 麻衣蘭さん、コメントありがとうございます！毎日見てくださってるんですね、嬉しいですありがとうございます！実は今日の更新が最終回です。どうぞ最後までよろしくお願いします。 (2018年12月31日 0時) (レス) id: 2278c0528b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やすけ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/my_dreamwould
作成日時：2018年12月12日 0時
