【HQ】私を買うのは。

第三十四話 ページ34

「じゃあ、Aはこれからすぐ店ね。はい、札。」


「あ、ありがとうございます。」


ぽけーっと考えていたところ、
やけに機嫌のいい朝霧姉さんに札を渡される。



札とは、今日は店に誰が出ているのか
ひと目で分かるように、入口に飾るものだ。
休みがもらえようになってから自然と出来た吉原(ここ)のルールである。





うわ．．．達筆．．．
字が上手いって羨ましい。

私も字が上手けりゃいいのになー。




そんなことを思いながらも、私は店に移動する。




あぁそうだ！、今日日曜日じゃないか。
初日からハードになりそ。


賑やかな声を聞いて、小さくため息をつく。



．．．まぁ、頑張ろう。



でも最後にはグっと自分の心に喝を入れて、厨房へ向かう。




あー、菅原様来てるかな。
来てたらなんか恥ずかしいなー．．．

って赤葦様は絶対いるよね。
いないでほしいんだけども。

アッ及川様とか黒尾様が来てたら私終わるな。

日向さ．．．様、来ないかな。
この前のお礼したい。




くるくると頭の中で考えは巡る。



何を考えていたのかと思えば
すぐに別のことを心配しだし、本当に彼女は忙しい。





「Aー、ごめん今みんないなくて。 悪いんだけどこれ、持ってって。 して、人を待ってらっしゃるみたいで今お一人だから、暇にならない程度にお酌とお話して差し上げて。」


「えっ、あ、はい。」



厨房に向かうとすぐに任される仕事。

お客さんに一対一で対話とは、
初っ端ながらすごいこと任せますね。


少し不安ながらも、野菜炒めと酒の乗った
お膳を持って、部屋へと向かった。

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