Guardian

10：Hero ページ11

梅野さんとサイン確認をしていた時、こう言われた。

T44「A、---..---って投げれる？」

『はい。ランナーがいる時には使えないし変化も不規則なので捕球が難しいと思いますが』

T44「多くは使わないけど頭に入れとく」

『わかりました』

『私はサインに首は振らないので好きなように動かしてください』


ボールを受け取り、何球か投げてみる。調子はいい。

目を閉じ、ゆっくりと呼吸をする。
頭の中に去年の甲子園の映像を思い浮かべ、目を開ける。



『きっと、大丈夫』そう呟き、打者に立ち向かう。

これからの投球以外の事を考えないようにした。


一球目 ストレート 見逃し
二球目 スライダー ファウル
三球目 ストレート 空振り

四球目 ストレート 空振り
五球目 ストレート ファウル
六球目 ストレート 見逃し

七球目 カーブ 見逃し
八球目 ストレート 空振り


九球目で梅野さんがこれまで出さなかったサインを出した。

後ろに逸らしてしまう不安は捨て、全力で腕を振る。ボールが生きているように動き、スイングされたバットから離れたところを通過し、梅野さんのミットに吸い込まれた。
球速表示にスタンドからざわめきが起きる。


[97km/h]

これが、最後の切り札でもあるナックル。50km/h近い球速の差による緩急と不規則な変化で三振を奪う私の決め球。
高校時代は(こんな言い方はアレだが)受けられる捕手がいないこともあり泣く泣く封印してたが今は思う存分使える。



私のプロ初登板は、三者連続三球三振という結果で終わった。
その後梅野さんのホームランによりチームも逆転勝利し、プロ初勝利も手にした。

ビジターだけど特別に二人でヒーローインタビューをさせていただいた。


T44「本当に凄いです。この子、日本一のクローザーになれます」
梅野さんが私の事を褒めてくれた。

褒められるのに慣れている訳ではないので恥ずかしかったけど嬉しかった。

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