あの人の妹はFightingGirl! samurai (ページ39)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:59,245 hit

The best night ページ39

『まだ終わってないよ。左腕は使える。』

F6「お前、無茶やぞ！」

F2「その腕で投げるの！？」

『当たり前。最後くらい無茶させてよ。』

立ち上がり、グローブを右手に持ち変えた。

『スライダー、私の決め球ね！』

F10「…わかった。さっさと終わらせるよ！」

三振とるのは考えない。早めに打たせるか。

実況「なんと、杉谷続投です！あの状況でもまだ投げるのか！？」

実況席荒れてそう。ま、私が悪いけどさ。

近本さんは一塁にいて、次のバッターは健斗。

『じゃあ、さっさと終わらせますか。』

.

思いの外粘られて、次をラストにしたい場面。

キャッチャーから出たストレートのサイン。

少し驚いた。ここまで変化球主体で来てた。ストレートは球速、球威が落ちるから使わなかったし。

右腕なら160、170出るけど左だと出ても150ってとこだろうし。

緩急をつけて勝負しに来るの？

F10「(A、大丈夫。僕を信じて。)」

そっと、右腕に誰か触れた気がした。

はっとそっちを見たけど、勿論誰もいない。

ただ、ずっと痛かった腕が不思議と暖かくなって、痛まなくなった。

流れるように投げた直球は、振られたバットにも当たらずにミットの中へ。

『終わった…』

右腕はもう痛くない。戦いぬいたんだ。

セカンドの守備位置から駆け寄ってきた兄が優しく私の腕を撫でた。

F6「よくやったな。」

大将は少し荒っぽく私の頭を撫でた。

ふと客席を見ると、ありえない光景が。

『スタンディング・オベーション……』

タイガースファンの皆が立ち上がり、私の方をみて拍手をしている。

それを見ただけで、胸がいっぱいになり涙が溢れてきた。

It was the best night.

悲しみなんてない、最高の夜だった。