気づかせてくれた。 ページ10
『福岡、か。何か久しぶり。』
来たことないのに、懐かしい。変な感じ。
オープン戦、ホークス対バファローズ。
自由席ということもあり、かなり早く来てライトスタンドの一番前に座り、試合開始を待つ。
微かに感じる芝の匂い、バットにボールが当たる音。
何か気づかせてくれる、気がする。
『ここ、来たことあったんか……?』
人が増え、スタメンも発表されて、試合直前。
応援団が、ずっと同じ応援歌を演奏してる。
「グラウンドに輝く一番星を
その拳を上げて掴め杉谷A」
杉谷…ファイターズの?
なぜヤフオクドームで流れてるの?
『あの……すみません。』
隣にいた女の人に聞いてみた。
『なんでファイターズの応援歌が流れてるかご存じですか?』
「あぁ、スワローズが杉谷選手が帰ってくるまで応援しようって始めたのが、12球団全部に広まったんです。こうして、ファイターズと試合がなくても演奏してるんですよ。」
『そうなんですか!?』
「はい。私、ずっと楽しみにしてるんです。杉谷選手が元気でプレーしてくれるのを。」
試合が始まり、初回、バファローズの攻撃。
一番打者が打った打球は真っ直ぐに私の方へ飛んできて。
ツーベースになる、と思ったけどそんなことなかった。
白と黄色、9番のユニフォームの選手がダイビングキャッチ。
思わず身を乗り出したら、その人と目が合う。
驚いたような顔を一瞬していたけど、驚くのはこっちだ。
『ギータ、なんで……』
どうして忘れてたんだろう。
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作者名:神瀬結衣@虎党 | 作成日時:2019年3月3日 0時