心のない人形。 ページ30
「速水さん、これお願いできる?」
『あ、はい!大丈夫です!』
涼と卓哉に再会して一ヶ月。
速水綾香、と偽名を使って親の会社で営業をしてる。
いや、正確には縛られてる。
理不尽な上司、私の引き出しや鞄に仕込まれた盗聴機、卓哉からのDV。
正直、私の精神はもうボロボロだ。
でも、逃げることはできない。逃げたら大切な人…ギータや師匠、増井さん、晋太郎に危険が及ぶ。
それなら私は、自分が傷つくのを選ぶ。
卓哉「A、遅いねん。」
『…ごめん。』
卓哉「謝って済むんなら警察いらんわ!泣いて謝るしかできひんのか!!」
ほら、今日もそうやって私に痣をつくる。
煙草の火を当てられたり、殴る蹴るの暴行を受けたり。
もう、慣れてしまった。
会えないほどに、会いたい気持ちが高まって。
会いたいと思うほど、会えなくなって。
無限ループから抜けられない。
『逃げたい』なんてぽつりと言えば、
「逃げるな」と私に恐怖心を植えつける。
いつしか私は、心のない人形になっていた。
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作者名:神瀬結衣@虎党 | 作成日時:2019年3月3日 0時