今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:5,536 hit
小｜中｜大
＊ ページ17
ぱちん、と。目が合います。鮮やかな花火の光を湛えた瞳が、私を見ていました。やわらかに、やさしく緩められて、私をじっと見ていました。見つめたまま、あの方は綺麗だな、と返事をくださいました。私はあのとき自惚れて良かったのか、未だにずっと考えております。あの方は、何が綺麗だと感じたのでしょう。やはり花火なのでしょうか。それともまさか、私？ 自惚れだと分かっていても、かすかに期待することがやめられないのです。もしやと、希わずにいられないのです。
あの美しい光景を忘れられるはずがない、と先程は申しましたけれど。きっとそれ以上に、花火の輝きをその瞳に閉じ込めた、色鮮やかに照らされるあの方のことを、私は一生忘れられないのです。まるで雷が落ちて灼けついてしまったように、もう一生、忘れられそうにないのです。忘れたくないのです。
嗚呼、だけど。いっそ忘れられたのなら。私がこうも苦しむことはきっとなかったのでしょうね。それだけがはっきりと、分かっているのです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳴草 | 作成日時：2022年5月6日 1時
