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四、霹雷が灼けついた ページ12
闇夜に弾けた鮮やかな花の散る様を、はっきりと覚えているのです。
二週間はあっという間に過ぎて、花火大会の日がやってきました。私とあの方は、いつもよりほんの少し質の良い浴衣を着て村を出ます。隣に並んで、歩いて催事場のある甘金島に向かいました。あの方と並んで歩くことは多々ありましたが、普段と違ってその日はとても言葉少なでいらっしゃいました。出掛けるという時にちらりと私を見たきり、むっつりと黙り込んでしまったのです。今思うと、緊張していたのかもしれません。それきり目も合わさずに、ヒグラシのカナカナという哀愁漂う声の中、私たちは果実のようにぼとりと落ちていく夕日を横目にカランコロン下駄を鳴らして歩きました。
到着する頃には案の定と申しましょうか、甘金島は大変な賑わいです。人がたくさんで、屋台からは威勢のいい店主の呼び声が聞こえます。それまで人から伝え聞くだけだった祭りならではの空気に、私は思わず感嘆の息をつきました。そんな私にようやく目を向けたあの方は私の手をさらりと攫って、くれぐれもはぐれないようにと言いつけます。小さな子供でもないのにと文句を言う余裕もなく、驚いた私は思いがけず触れることになった手をぎゅう、と握ってしまいました。私のよりもずっと大きくて、ごつごつ角ばっていて、いつも刀を握って私たちを守っている手。当然ですがとても殿方らしい手で、私は頭の天辺から爪先まで、体全部が熱くて堪らなくなりました。夏の熱気が身の内に籠るのとは、また違った感覚です。
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作者名：鳴草 | 作成日時：2022年5月6日 1時
