君と Ⅱ. (ページ5)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:45,460 hit

・ページ5

朝の掃除をしなくなったからといって櫻井が早く出勤することに変わりはない。
通勤ラッシュの人混みがが嫌いなのである。

出勤するとそこには掃除中の後輩たちと、櫻井の席に座っている二宮。
頬杖をついて目を閉じているその姿も何故か無駄に格好よくて

櫻井は掃除をしている後輩たちと挨拶を交わしながら自分の席に向かう。

「ニノおはよう」

「…ん、おはようございます翔ちゃん」

「寝てたの？」

「目ぇ閉じてただけですよ」

「そう？つーか、掃除しなくていいのに俺より早いってどういうことよ」

「考え事してたら早く来ちゃって」

「…悩みでもあるの？」

「うん、今日は何を奢って貰おうって」

「心配した俺が馬鹿でした。」

「んふふ。さー今日は何を飲もうかなぁ」

そう言うと二宮は席を立ち櫻井から鞄を奪う。中から財布を取り出して鞄は机の下に置く。
それが合図かのように、二人は部屋から出ていく。

櫻井も最初こそ、二宮の行動を止めようと声を大きくしていたのだが、今は鞄を取られてからの一連の流れをただ見守るだけだ。

そんな二人を毎日見ている後輩たちも、先輩たちはこれが常識なのだと、ただ二人を見守るだけである。

「ニノ髪伸びたね」

休憩室に行き、二宮に奢らされることにも馴れた櫻井が缶コーヒーを渡しながら話しかける。

「そうですかね？」

「伸びた、と思うけど…」

櫻井の手が二宮の前髪を撫でるように触れる。

「前から長かったんですよ。前髪上げてたからあんま邪魔じゃなかったんだけど」

「あー、そういうことね！」

「うん、指摘されたら邪魔になってきた。目に入るね」

「あ、ごめん。触ってたら余計だね」

「ん、大丈夫ですよ。翔ちゃんに撫でられるのは気持ちがいい」

二宮は受け取った缶コーヒーを口にする。
櫻井は二宮からの言葉に自分は撫でるのが上手いのか、と新しい発見をして頬が緩む。

「また前髪上げたら？」

「翔ちゃんはどっちがいい？」

「俺？…俺はまあ、前髪あった方が好きだけど」

「じゃあやっぱ前髪はおろしとく」

「なんだその理由」

「お揃いでしょ」

「…なんかちょっと、それもう恥ずかしいから忘れて」

「お揃いだもんねぇ」

櫻井はニヤニヤしながら見てくる二宮に顔を見られないよう手で隠す。

「そういう翔ちゃんも髪伸びたね」

前髪の上から手で顔を覆っているため、セットでフワッとなっている髪も押し潰されて実際の長さがわかるようだ。

「あ！そういえば！」