君と Ⅱ. (ページ4)

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次の日から二宮は宣言通り櫻井と同じ時間に出勤するようになった。
そして次の日から櫻井は掃除に参加しなくなった。
しなくなった、というよりは参加しなくてよくなった、が正しいのだが。

それというのも次の日の朝、櫻井が出勤するとなぜかそこには櫻井よりも早く出勤して掃除を手伝っている二宮がいて…むしろもう掃除を終えて後輩たちと談笑を楽しんでいる二宮がいて。
出勤して早々、唖然ととその光景を見ていた櫻井に気づいた後輩が近づいてきて

「あ、おはようございます先輩！聞いてくださいよ、二宮先輩にアドバイス頂いて分担分けしたんですけどそれがもう本当に効率よくて！ちょっとしたズル賢さも大切だよ、なんて笑顔で言われちゃって！明日から先輩には掃除手伝って貰わなくても大丈夫そうです！今までありがとうございました！」

そう明るく櫻井に伝えてくる。

初めこそ通勤ラッシュに当たりたくないからという理由で早く出勤して、ついでだからと一緒に掃除を手伝っていたのだが、朝の掃除の時間は櫻井にとって後輩と交流を持つ大切な時間になっていたのだ。

しかし後輩から直接「今までありがとうございました」なんて言われてしまえばもうお前の助けはいらないよ、と言われているようなもので

櫻井は見るからに肩を落とした。

「え？先輩、掃除そんなに好きなんですか」

「そーだよ。悪いか。…ニノの提案はそんなにいいものなの？」

「まあ常々みんなで掃除する必要あるかな？とは疑問に思ってて、それを相談してみたらすごくいい提案を頂いて！」

「ははは、そうなのね」

後輩が自分にじゃなくて二宮に相談をした、という事実にも更に気分が重くなる。

「翔ちゃんももう結構な先輩じゃん。後輩くんたちからしたら一緒に手伝ってもらってることが申し訳なかった部分もあったんだよね？」

二人のやり取りを見ていた二宮が話に入ってくる。

「そうだったの？」

「いや、えーっと…めちゃくちゃありがたかったし一緒に掃除できて嬉しく思ってましたよ勿論！…でもやっぱ掃除って新入社員の仕事でもあるので申し訳ないな、とは思ってました。だけどそれよりも嬉しかったです先輩優しいから。でももう大丈夫です、始業時間まで自分の時間を楽しんでください！ね、二宮さん！」

「ねっ」

後輩はそう言うと自分の同期の輪に戻っていった。

後輩が自分のことをそんな風に思ってたのかと嬉しくなる櫻井。

上手く丸め込まれたのだろう。