想うこと ページ19
「…くそっ」
二宮は相葉からの電話を一方的に切ったあと、募った苛立ちをどこにぶつければいいのかわからないままでいる。
相葉から言われたことに苛立って、櫻井にも関わらないなんて言ってしまって。
携帯を見れば相葉からのごめんというメッセージ以外に連絡はない。
「…ごめんね翔ちゃん」
一人静かな部屋に二宮の声が響く。
外では二宮の心を映し出すかのように雨が降り出したようで、より一層静けさが増す。
トントントン
静かな部屋に戸を叩く小さな音が聞こえ、二宮は玄関に近寄る。
トントントン
部屋を叩く音は、自信がなさげで静かでなければ到底気づけないような強さで、インターホンを押さないところからも二宮は、気づいて欲しくないという相手の気持ちに気がついた。
「…誰ですか」
「ニノ？」
「…っ、翔ちゃん？」
「うん。」
訪ねてきたのは櫻井で、玄関越しに聞こえるその声はとても小さい。
「…どーしたの」
「あの、えっと…部屋入っても…」
二宮はそう言われて部屋を見渡す。帰ってきてすぐ苛立ちを当てたのは部屋だったため、散らかり放題で人をあげれる状態ではない。
「ごめんちょっと、部屋は…」
「そ、そうだよね…怒ってるよね…」
そう言われて、櫻井が謝りに来たのかと気づく。
その途端、先ほどの櫻井の態度だとか相葉に言われた言葉、好きと言われて断らなかった櫻井のことを思うと落ち着いていた苛立ちがまた募り始めて。
「そう、俺翔ちゃんに怒ってるんですよ。」
「うん…」
「一人で怒って俺の話も聞いてくんないで、それで？相葉くんと仲良さげにしてさ、俺にばっかり怒ってるんでしょ翔ちゃんは。」
「ごめんねニノ…」
外から聞こえる声がどんどんどんどん小さくなっていくので、二宮もさすがにいたたまれなくなる。
好きな人が悲しそうにしているのはいい気分ではない。
「もういいよ、もういいです。」
「…っ」
「…？わかりましたから、翔ちゃんのこと。もう俺は…」
翔ちゃんを怒らせることはしないよ、と続けようとしたところで二宮は家の前から人の気配がなくなった気がした。
「翔ちゃん…？」
やはり外から返答がなく、戸を開けて外を見てみるがそこに人影はない。
しかし、そこに人がいたことがわかるように階段から自分の部屋の前までが雨で濡れていた。
「あの人、傘もってねえのかよ…っ」
雨は土砂降りに変わっていて。
櫻井を追いかけるように二宮は部屋を出る。
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作者名：モノ | 作成日時：2017年7月31日 21時
