君と Ⅱ. (ページ2)

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櫻井と二宮のことを微笑ましく見守っていた後輩達は、何事もなかったかのように掃除を止めていた手を再び動き出させる。

「いやいや、まって、どういうこと？」

「いやーなんというか、ほんと変に見えないっていうか、別に気持ち悪くもないし…？二宮先輩が人と距離が近いっていうのは噂で聞いてましたし、お二人は同期ですからまあ変ではないのかなぁと…あ！俺らはそんな引っ付いたりしないですけどね！気持ち悪いし！でもお二人は全然！いいと思いますよ！眉目秀麗なお二人が仲良くて社内も嬉しい限りですよきっと！」

そういうと後輩は掃除に戻っていく。

「別に周りは俺らがどうしてようがなんとも思わないんですよ。前から俺は人との距離近いしさ、それもあってだとは思うけどね？まぁ、友達ってこんな感じなんだよわかった？」

「知らなかった」

「勉強できたね。よかったじゃん。」

ポカンとしている櫻井に矢継ぎ早に話す二宮だったが、櫻井がまた何かを言い出そうとしていたからそれを阻止して、フロアの外に連れ出そうとする。

「なになに、掃除は掃除！」

「翔ちゃんの後輩たちが俺らの掃除道具持ってったからやることないし」

「まじだ」

「ほらほら、朝の一杯奢ってくださいよ」

行きますよ、なんて言いながら二宮は櫻井の背中をグイグイと押していく。

櫻井は二宮にされるがままになりながら、後輩たちに後のことは頼んだと伝えた。
二宮は中にいる櫻井の後輩たちをチラリと見ると、目で笑いかけて口を開く。

『よくできました。』

二宮は言葉を発することはせず、口でそう伝えた。そうして二人は後輩たちの視界からいなくなっていった。

「二宮先輩はガチ」
「男嫌いとは？」
「櫻井先輩は変なのに捕まったな」
「でもお似合いじゃない？」
「これから朝は俺らだけで掃除頑張ろうな」
「せっかく櫻井先輩と仲良くできる時間だったのに」
「バカお前、二宮先輩に睨まれるぞ！」
「同期とか友達の範囲を越えてね？」
「「「「「「それな」」」」」」

「はい、ブラックコーヒー」

「ん、ありがと」

二人は休憩室に来ている。
朝の掃除の時間である現在は、煙草を吸うおじさんも携帯を弄りにくる女の子も誰一人いない時間だ。

櫻井は一人で朝の一杯を飲むこの時間が好きであった。窓の外を眺めてぼーっとする自分の時間。

でも今日からは違うらしい。

「翔ちゃんは朝はいつも今日くらいにくるの？」

「うーん、まあ」

「じゃあ俺もそーしよ」