喫茶「心音」

＊ ページ38

『.....それだけ、？』


こくり、と彼が頭をたれる。


なんだか、いろいろ考えていたものが、全部どこかにいっちゃって。


『...なんだぁー、...』


一気に私の力も抜けてしまって、へなへなとその場に座り込む。

どうしても浮かんでしまっていた悪い予感には、ずっと蓋をしていたけれど、
そんな不安も、シャボン玉のように、ぱちん、と弾けた。





「Aちゃん、」

大晴くんが、私の前に膝をつく。


「いままで、

たくさん、ごめん。


ほんまに、めっちゃ、思ってるねん。



でも俺、
もうちょっと頑張れるくらい、元に戻ってきた思うねん。





...なんか、ほんまは、
ここがめっちゃ心地よくて。


ほんまは、ずっとここにおりたいって思うほど、
好きやねん、ここが。



....でもそれじゃ、

それじゃ、あかんなって、思ったから。



さっき、誠也くんの声きいて、
俺、....決めたんよ。」




大晴くんが、体勢を直して一呼吸おく。



思わず、息をのむ。

なぜなら、これから彼から放たれる言葉が、
私が本当は一番避けたかった、言葉だから。





「俺、明後日、帰るわ。

元通りの生活に、戻る。」

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