【短編集】短め置き場【d!】 (ページ8)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:715 hit

2 ページ8

「お断りします！！！！」

「なんでだ！！今の雰囲気は確実にYESの雰囲気だったろうが！爽やかな朝、君の珈琲が毎日飲みたいというアピール！！！なにがダメなんだ！！」

「総統、分かっていらっしゃいますか！？貴方はこの国の長！！私は貴方の秘書ですよ！！！？」

「オフィスラブというジャンルがあるだろう！」

「それは創作世界での話です！！！！！」

彼と私は、毎度毎度こんな会話をしている。ある時は夕日の差し込む総統室で。ある時は木陰で。またある時は星の見えるベランダで。

「あーーーーーお前と結婚したい…愛おしくて堪らない…」
「総統！良い加減にお見合いの１つでも受けてください！私の胃が持ちません！！」
「お前との見合いなら喜んで受けよう」
「そーとぉー…」

彼はまた珈琲に手を伸ばす。

「ともかく、トントン様の胃が限界を迎える前に早く書類の方をお願いします」
「わかった、善処しよう」
「…もし昼食までに終わったら、３時ごろにケーキをご用意しますよ」
「さて、早速取り組もうか」

がさがさと書類の山を切り崩し始めた総統。これは暫くは集中しているだろう。
私は扉の前で一礼して総統室を出る。

バタン、と閉まった扉。

「はあぁあああぁあああああ〜〜〜！！」
ダメだ、あの瞳は正直耐えきれなかった。背中に走った、ぞくりとした甘い痺れ。
「そーとぉカッコよすぎるよぉ〜…」
ずりずりと扉の前にしゃがみこむ。そう、容姿といい低いバリトンボイスといい、彼は私の好みドンピシャなのだ。
「ダメだ、私は総統秘書、私は総統秘書、私は総統秘書…」

そんな私の呟きを聞いていた総統が、総統室で肩を震わせているなんて知る由もなかった。

彼と私の攻防戦は、まだまだ続く。