親友ちょっと超える一線が越えられない(ut) ページ5
「Aちゃーん、ごめんねぇ、お世話になりますー」
「こんばんは鬱くん。久しぶりだね」
「今回はイケると思たのになぁ」
「うーん、割と長かったもんねぇ」
ヨレヨレのスーツを腕に引っ掛けて入ってくるのは、幼馴染の鬱くん。
女性遊び…って言ったら本人は怒るけど、次々と女性を引っ掛けては振られ、引っ掛けては振られ…そして振られて家に帰る気力もなくなった時、なぜか私の家にくるのだ。
初めて来た日はそれはもう驚いた。
「うううううう鬱くん！？」
「わーーんAちゃんー！！振られちゃったよぉ〜！！」
唐突に彼が家を訪ねてきて、部屋をバタバタと片付けて…そして言われたのは「あぁ、大丈夫やで。Aちゃんの事はただの友達としか思ってへんから」
という一言。ああ、そう、としか返せなかった。まぁ確かに私も彼のことは友人、幼馴染の一人としか思っていなかった。…少し、ずきりと痛んだ胸の痛みには気付かなかったことにした。
「ごめんね、余り物で作ったやつなんだけど」
「ええねん、食えるもん出して貰えるだけ有難いわ」
彼は私の作った野菜炒めをつまむ。彼は家に来る1時間前には連絡してくるので、足りないものはコンビニで買ってくる。
「今回はどんな子だったの？」
「カナちゃん。髪が長くてサラサラで、おっぺえがおっきくて優しいねん。そんでもって料理上手。けど、ちょっと束縛が激しくてなぁ…友達と飲みに行くだけやのに1時間毎に今どこ、とか何してるん？とか連絡してくんねん」
そんで絶えられへんくてもう嫌やって言うたら殺されそうになってん、と言いながら鬱くんはご飯をかきこむ。
「そっか、それは災難だったねぇ」
私は彼の目の前でホットミルクを啜る。
ご馳走さま、と手を合わせる鬱くん。綺麗に食べ終わったお皿とお箸を持って台所へ向かう。彼は必ず、食べ終わった後食器を洗って片付けてくれるのだ。
「ありがとう鬱くん」
「ええねん、宿に飯にって借りてんねんからこの位当然や」
私はお風呂どうぞ、と彼にシャツと下着を渡す。いつのまにか我が家に装備してあった彼のシャツ、下着、変えのスーツ、タオルに歯ブラシ。
「なにしてんだろ、私」
シャワーの音を聴きながら、私は何だかおかしな気分になる。
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作者名：都 はなれ | 作成日時：2023年4月11日 21時
