裏・ハマナスは潮風に吹かれ咲く (ページ8)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:24,381 hit

凍えるような新幹線のホームで温もりを感じるページ8

『新幹線何時に着く？』

「○時○分」

『何号車？』

「○号車」

『迎えに行くから…』

父さんに確かめた結果を早くAに伝えたくて、俺は駅まで迎えに行く事にした。

夕方と言っても、ほぼ真っ暗だったけど、

この時期、この辺りは雪ですっぽり包まれていて、

街灯に照らされた白銀の街は、幻想的な風景だった。

『Aが今日、こっちに来るから、ちょっと新幹線の駅まで迎え行って来る。』

母親「そう。Aさんがこっちいるうちに家にも連れて来なさいよ。」

『あぁ、いいよ…』

テンション低めで返事したけど、俺は連れて来る気満々で(笑)

兄さんのから借りた軽自動車で新幹線の駅に着く頃には、雪はただ深々と降り続いていた。

この辺じゃ、めっちゃ面が割れてる俺は、車で待ってようかって思ったけど、

新幹線の中のAに、ラインはなかなか繋がらなくって、

迎えの人でごったがえす一つしかない改札付近よりも、

いっそ、駅のホームで待っちゃえって、

マフラーをぐるぐる巻きにして目だけだして、

ニット帽を目深に被って、入場券を買った。

東京じゃぁ絶対怪しい出で立ちだけど(笑)

こっちじゃ、寒い駅の構内みんなそんなもんだから、何の違和感もなかった。

Aの乗った車両が到着するホームで、

待っているのは俺１人だった。

Aを乗せた新幹線が静かに駅の構内へ入ってくる。

たった、２ヶ月弱離れてただけなのに、

もう何年も会っていない恋人にでも会うような胸の高鳴り。

静かに新幹線は止まり、俺とホームを隔てるゲートの自動扉がゆっくりと開かれ、

新幹線のドアが開く。

そのドアからAの姿が見え、ゆっくりとホームに降りてくる。

その姿を抱きしめて良いんだって知っている今、

俺は思わず手を広げていた。

そして、Aもそのゲートからホームに降り立つと、

人影のないホームで俺の両腕に吸い込まれるように包まれた。

しっかりとその身体を抱きしめる俺。

『お帰り』
「ただいま」

降り立った人は足早に改札口を目指し、ホームには俺達だけが残された。

俺の腕の中、安らいだようなAの顔を見ると、

俺はそのぐるぐる巻きにしたマフラーからぐいっと顔を出し、

『kissしよっか？』
「えっ？」
『俺達、兄妹じゃなかったみたい(笑)』

びっくり顔のAを俺は再びぎゅっと抱きしめた。