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「Aっ…」
『………秋ちゃん、』
勝手にあの場の空気を悪くしたのにも関わらず、秋ちゃんは私を追いかけてきてくれた。
『楓さんのピアノ、やっぱりすごかったね』
「そうだね」
『音は人を表すって言うけど、楓さんみたいに美しくて…、凛としてて…』
「うん。でもおれは、どこか儚げだけど…ちゃんと芯のある、Aの音が好きだよ？」
そんなふうに言ってくれる秋ちゃんの慰めが、余計に私を惨めにさせる。
昔からいつも褒めてくれる、秋ちゃんの言葉は嬉しい。でもね…、
『もう、……疲れちゃった、』
「……、」
『小さい頃はあんなにピアノが好きだったのに、大人になるたび誰かと比べて落ち込んだり、順位を競ったり…』
私が目指してたのは、そんな世界じゃなかったはずなのに…って。
ただ、大好きなピアノを弾きたかっただけ。
でもいつしか、ピアノを前にすると、恐くて怖くて……たまらなくなっていた。
「気づいてあげられなくて、ごめん…」
『……秋ちゃんは何も悪くないよ、』
「けど…、帰りたいって、Aが言ってくれたあの日に気づくべきだった」
そんなふうに、自分のことのように悲しい顔をする秋ちゃんを、見たかったわけじゃない。
私はいつになったら、兄離れができるんだろう……ちゃんと、大人にならなくちゃ。
『……でも、もう大丈夫だから。ほら、秋ちゃんそろそろお店戻らないと』
「……分かった。気をつけて帰るんだよ？」
『うん、ありがとう』
私の頭を軽くなでて、秋ちゃんは来た道を戻っていく。
そんな後ろ姿を見送っていると、急に立ち止まった秋ちゃんがゆっくりと、こっちへ振り向いた。
「……A、」
『……？』
「……………特別だから、」
『秋ちゃん…？』
「Aがいちばん、おれにとっての特別だから」
いつものように、私の大好きな笑顔で手を振る影が、今度こそ去っていく。
きっとピアノのことを言ってくれたはずなのに、勘違いしてしまいそうなほど…
心臓の音が、はじめて、うるさいと感じた。
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I(プロフ) - レイさん» レイさん、コメントありがとうございます！！ …夏が人に恋をさせる らしいですからね、日村信之(36)さんによると（笑）気にいってくださってとても嬉しいです。これからもお楽しみください(*^^*) (2016年8月3日 10時) (
レス) id: 1e35e1a13a (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 夏の恋って憧れますよね！素敵な作品と出会えて感謝です。\(*´∀`*)/ (2016年8月3日 7時) (レス) id: e7a4dccf18 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - KIKIさん» KIKIさん！コメントありがとうございます(*^^*) …そうなんです、これを書き始めたときにただの夏のラブストーリーではなく夏特有の切なさも織り交ぜたいと思ったので、切なさが伝わっていてとても嬉しいです☆ (2016年7月28日 13時) (レス) id: 1e35e1a13a (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - ＊いちご＊さん» いちごさん、コメントありがとうございます^_^ きゅんきゅんニヤニヤしていただけて私のほうこそニヤニヤしております（笑）冬真の本気なのか冗談なのかわからないアプローチが書いててとても楽しいです♪ (2016年7月28日 13時) (レス) id: 1e35e1a13a (このIDを非表示/違反報告)
KIKI - 初コメスミマセン。すっごく切ないです！でも、とっても面白いです (2016年7月28日 9時) (レス) id: 9086491411 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：I
| 作成日時：2016年7月13日 2時
