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目がさめると、ナタリーのコテージのベッドの上だった。
キョロキョロと見回すも、ナタリーは見当たらない。
外を見ればしんしんと降る雪。
しんと静まり返った部屋は降る雪が音を消し去っているようでぶるりと身震いをする。
「あぁ!A!起きたのか!心配したのよ!!?」
「…まぁ、心配をかけてすまない…」
「良いのよ。オタガイサマ、でしょ?」
ニッコリと太陽のように笑うナタリー。
その笑顔に私は太陽になれないのだと実感する。
言い方が悪いがナタリーに嫉妬しているのだろう。
そんな浅ましい自分が悔しくて下唇を強く噛むと必死にナタリーは止めた。
ナタリー曰く妊娠中はあまりストレスを溜め込まないほうがいい、と。
「ごめんなさい、少しイヤだったのね。今度から気をつけるわ」
「いえ、そんな顔をしてほしいわけじゃあないんだ。
私はただ…」
ただ、何なのだろうか。
降谷には笑って欲しいと願った。
しかし私は、他の人にも笑って欲しいと願う。
何故だろうか。先ほどの笑顔が嫌でたまらなかったはずなのに、何故こんな事を思うのだろう。
「ハハッ、…ほんと、嫌な女だよな、私は」
「それは違うよ。貴方はね、嫌な女じゃあないわ。
普通の女の子なの…お母さんになるにつれて気が立ってるだけだよ。気にすることはないわ」
優しく私を撫でる手つきが久しくあっていない母のようで柄にもなく彼女の胸で泣いてしまう。
しかし彼女はそれを甘んじて受け入れる。
くそう、今気付いてしまった。
彼女は幼少期の降谷に似ているのだ。
下手に笑って下手に人に甘えさせるのが上手い奴。
あぁ、こんなにも大好きなんだ。
降谷じゃない違う人の温もりでも思い出してしまうくらい、愛しているのか。
「ふ、るや、何で、うぁ…ひくっうぇえ…うううっ」
「大丈夫、大丈夫」
私が年柄もなく泣いている姿にも軽蔑せずポンポンと背中を軽く叩くナタリー。
違う奴の名前を言っているのに、なんて優しい奴なんだ君は。
「ナ、タリー…」
「なあに?」
「ありが、と」
そう言うと、さっきと同じ太陽のような笑みをこぼした。
しかし先ほどと違い、嫌な感じがしない。
むしろ安心する笑みだ。
優しい笑みに見守られながら、私はまた深い眠りについた。
夢の中で、降谷と私の幼い頃の夢を見た。
『なぁ、零』
『何だ?A』
『私ねぇ、零のお嫁さんになるわ』
『…ッ!!じ、じゃあさ、俺はお前を守れるくらい、強くなってやるよ!』
『わあ、楽しみ!!』
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作者名:硫酸Ryu☆ | 作成日時:2018年4月11日 18時