【名探偵コナン】愛して"いる"んだ。 (ページ5)

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「ふ、寒い…」
ヒュウと北風が吹く場所。
北緯51°20' - 71°50' …
西経130°-東経172°にある最大の都市、アンカレッジに降り立っていた。
そう、アメリカ最北端の地、アラスカである。

「ジュノーにはいないのか」

どこにその助産医がいるのかを聞いて一番最初に言ったのはその言葉だった。
ジュノーとはアラスカの州都で、そちらのほうにいるかと思っていたからだ。

「まぁ、彼女金の亡者だからねぇ」

「なるほど、人が沢山いるからか」

アラスカの最大の土地、アンカレッジに居るのはそういう理由らしい。
しかし、寒いものだな。
知っていたが。

「ここ、凍傷で手が腐ったりしないのか？」

「する奴もいるね」

1人で呟くと後ろで人の声が聞こえた。
日本人か？
振り向くとアイスブルーの瞳のウェーブがかかった腰くらいの美しい黒髪を携えた女性がいた。
すごく美人だ。

「…あんたは？」

「貴子から聞いただろ？アタシがナタリーよ」

「…随分と日本語が達者だな」

そう言うと、手を横に出して肩を竦めた。
助産師には思えないような風貌のこの女…ナタリーは私を自分の家と言ったオリーブドラブの家に連れ込んだ。
暖炉には火が焚いてありじんわりと暖かい。

「ふ、ぅ……？」

気持ちが悪い。
私はトントンとナタリーの背中を軽く指で突いた。
するとナタリーは心得た、と言うようにすぐそこから綺麗なバケツを取り出し、ここに吐いて、と言った。

「うぶ、うぇっ…ゴホッゴハッ」

「え？…なるほど、花吐き病なのね」

普通に吐瀉物を吐き出すと、胃が空っぽになったような感覚がした。
しかしそれは一瞬で、ずっしりと胃が重くなり花を吐いた。

「Adonis…フクジュソウ、だっけ？」

「…そうだな…」

「確か花言葉は…『sorrowful remembrance(悲しき思い出)』だったわね」

嫌な花だと毎回思う。
何故ここまで私に思い出させるのか。
彼は私を愛していないのに。

「…酷い花言葉だな…でも、あってるかも」

「え？Aハヤミだっけ？どう言うこと？」

「私と…この子の父親が行為をしたのはただの偶然なんだ…彼がこの子の事を知ってしまえば気に病むだろう…だから…ここに…逃げて来たんだ」

そういうとポロリと目から涙が一粒出て来る。冷たい。
ボロボロと止めどなく溢れてくる涙。
どう想ってくれたのだろうか、と今更ながら考える。降谷はこの子も嫌うのだろうか。
それとも、不本意とはいえ結婚でもしてくれるのだろうか。