【名探偵コナン】愛して"いる"んだ。 (ページ2)

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本来、人間の身体には花が咲くわけがない。
しかし花吐き病という奇病にかかってしまうと、何故か吐いた時に花が咲く。
それがどんな花かなんてわからない。
この『嘔吐中枢花被性疾患』という奇病は片思いを拗らせるとなるものらしい。
そして有効な治療法など見つかってはいない。
しかし両思いになれば白銀の百合を吐いて完治する…らしい。

「ふむ、無理だな」

私はそう呟いた。
流石に無理だろう。
花は奇病なんていう奇病持ちともう知れてしまったし、降谷は私をますます嫌うだろうな。

「なあ、風見」

「何です？早見さん」

「もし、好きな人に嫌われていて、しかも自分が人に忌まれるような奇病にかかってしまったら…どうすればいい？君ならどうする？」

我ながら嫌な性格をしていると思う。
こんな事聞いたとて、彼には愛してくれる妻がいるのだ。
奇病にかかったとしても、彼の妻は変わらず彼を愛するのだから。

「ふむ、そうですね。
嫌われてる、ですか…
俺ならその人から逃げますかね。
逃げて逃げて、そして誰も自分を知らないところで死にます」

少し驚いた。
それもいいかもしれない。
公安を退職して何処か遠い国にでも行って、独りきりで死ぬのも。
なら、寒い国がいいかな。
暑い国は苦手だ。

「ふむ、そうか。
ありがとう、風見」

「いえ、お役に立てて何よりです」

そう言った風見は少し哀しそうな顔をしていた。
どういう事だろうか。
しかしそれを聞く前に彼は何処かに逃げるように仕事に戻ってしまった。

善は急げ、とよく言うが、これがなかなか通らない。
公安部のエースとして働いてきた私を逃したくないのだろう。
まぁ、今までのセクハラの証拠を提出する、と言えば黙って辞表を通してくれたわけだが。
何かに使えるだろうと取っておいて良かった。

「三ヶ月後、か」

ボソリと自分のデスクの上でいう。
退職は三ヶ月後だ。
少しワクワクしてきたな。

チクっと左胸に痛みを感じた。
何だろうと思い見てみると、少し出ていた花びらの先。
なるほど、白銀の百合は心臓に根を張るらしい。

「チッ」

少しイライラとして、舌打ちをし、自分のデスクを蹴る。
痛い。
ただ単に自分の足を傷付けただけで終わってしまった。

「はぁ、あと三ヶ月かぁ…」